Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

あさのあつこ『NO.6 #9』  ★★★★

崩壊する矯正施設から間一髪脱出した紫苑は、瀕死のネズミを救うため、イヌカシ、力河とともに市内に突入した。そこでNO.6にまつわる全てを知った紫苑は、人間の未来をかけて『月の雫』に向かう。(Amazon

 完結おめでとう! な意味で★四つ。
 最終巻ではディープキスするらしいよって聞いて、いくらあさのさんでもまさかそんなわけ……と思っていたら、 嘘じゃなかった。
 ずっと気になっていた「ウェディングベルは鳴るのか?」でしたが、私の解釈から言うと鳴りました。あいつら誓いのキスしたからね。誓いのキスだよ。リーンゴーン。誓いのキスは激しいキスだったよ。何を言ってるんだよ。ネズミは女の子だったオチとかないからね。リーンゴーン。
 ストーリー的にはこんなんで風呂敷たためるんですか……ああ超常現象、だったけどまあそれは前から出てきてたからいいかなって感じ。あっさりすぎたけど、でも、あさのさんが書きたかったのが紫苑とネズミのラブなら、もう、ばっちりぎっしり書いてくれたからいいんじゃないかな?
 もう紫苑がネズミのことしか見てない。ネズミが死にそうだよーって打ちのめされてるときにイヌカシに慰められても「ぼくが求めているのはネズミのぬくもりだから」ってノリ。お前の心にはネズミしかいない。知ってた。知ってたよ紫苑。「君の傍にいることしか望んでない」うん知ってたよ紫苑。まったく愛情表下がストレートな子だね。ネズミはネズミで「紫苑だけが俺を助けてくれた」「紫苑のことをずっと見ていたい」「でも俺流浪の民だから行くよ、戻ってくるって絶対、誓いのキスな」ってノリ。
 主人公二人のディープキスで幕を閉じるって、それ何てラブストーリー……??? あいつらは全編にわたって私たちにノロケ聞かせてたようなもんですよ。あいつらのモノローグなんて大体「お前が好きだ」じゃないですか。これ何なんです。SF(恋)愛小説ですか。
 私こういうオチの二人見たことあるよ……入江亜紀「群青学舎」の「北の十剣」の二人……つまり、痺れを切らした紫苑は追手を差し向けてネズミを連れ戻してベッドに流れ込むのよ! 市民の皆様は「NO6を壊した、あの二人……見ろよ」的なポジションよ! 堂々とキスでもしてろよ!
 あさのあつこがNO6で紫苑とネズミの愛を「アブノーマル」的な捉え方を作中登場人物たちに一切させずに描ききったところ、それはものすごく評価しています。こういうものがヤングアダルト向け書籍として発売されるのは、とてもいいことだと思う。だからやっぱりBLレーベルではなくYA!から発刊されて正解だったんだ。
 でも、とはいってもさあ、驚きましたね。ヤングアダルト文庫で少年二人のSFを読んでいると思ったらまさかの(でもないけど、最初から結構その路線だったけど)あのオチ。あさのさんはこの調子でどんどんやっていただきたいです。よくアニメ化したな。ってことでアニメ最終話見る!

 以下はアニメを見た後の怒りのコメント(笑)あの最終回はひどすぎる。

  ええええええええどうしたのこの展開!?!? どうしたの?? 何で紫苑死にそうになってるの? アニメはどうしても紫苑をヒロインにしたいの? そこで死にそうなのはネズミだぜ? おいおいだからネズ紫が主流なんだな? つーかイヌカシも全然違うじゃねーかよ! ええええこれはちょっとえええどうしたの!?!? ど、どうしたの……あのたくましい紫苑様はどこへ行ってしまったの……ネズミのためなら力河を脅しつけて車を奪おうとする紫苑様はどこへ行ってしまったの……なぜ沙布???

 これは最終巻のエピソード丸ごとカットということですね?? それはあまりにもあんまりなんじゃないですかアニメ公式さん? ちょっとこれは構成ミスなんてもんじゃありませんよね? タイバニも真っ青の最終回じゃないすか?
 え、NO6原作組はアニメをどう受け止めたんですか……ちょっとこれはないよね……原作もかなり乱暴にまとめた感あったけど、これはないだろう。これはないだろうよ。えー。不満たらたらなんですけど。えー。これはないよー。
 ちょっと待ってよーーーーこんなキスじゃないよ! こんなおざなりなキスじゃないよ! 紫苑が全力の告白をしてからの優しく熱く激しいキスだよ!? えー! シオンを育てるのはイヌカシでしょ!? えー!!! えーーーーー!!! おいおいおいおいおいおいチップ壊しちゃったよええええええ!!!
 NO6アニメ最終回は、いくらなんでも酷過ぎるのではないか? あさのあつこも拳を握りしめて怒ってるんじゃないか? 大体9巻もの内容をやるんだから最初からもっと詰めてかないと入らないし、それができないなら途中で終わらせるか2クールなり使うべきだ。これは曲りなりにも原作好きとして許せん。
 二人の行く末と世界のそれにどういう決着をつけるのかなーって読んできて、前者は誓いのキス結婚エンド(私の解釈)、後者は瓦解と再興へ向けてと駆け足ながらも一応のケリをつけてくれたのに、そこ全て放り投げて終わりですか? せめてもう一話あったら全然違ったんじゃないの?
 さっきまで原作最終巻について語りたかったけど今は最終巻とアニメとの乖離について語り合いたい。それなりにしっかりと原作をなぞってきたのに(キスとかキスとか本棚のダンスとか)、最後でこれはないだろう。物語を終えるにあたって、二人の意思まるでゼロじゃん。二人が選んだ道なのに。あさのあつこの良いところは愚直なまでの感情表現なんだからしっかり掬ってほしいよ。沙布を利用した、あたりもさー。あれじゃネズミがさー。ほんと何で紫苑が撃たれる必要あったんだよ。ないよ。ないよー! 紫苑だけが俺を救ってくれた、に繋がるのにどうして大いなる力が介入しているの。
 だめだアニメ嫌いになるわこれ。何だかんだで八年追ってた身としては悲しいわ。八年間をこんな最終回にされちゃったのは悲しいわ。ため息しか出ないわ。あんなあっさり別れさせてくれるなよ。虚脱。