Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

中山可穂『ジゴロ』  ★★★☆

評価:
中山 可穂
集英社
¥ 1,470
(2003-02-05)

カイは新宿二丁目界隈で顔の売れたストリート・ミュージシャン。ギター一本抱えて現れ、道行くビアンたちに愛のバラードを歌いかける。彼女に翻弄される女たちの切なくも狂おしい愛の世界5話。

 この人の『花伽藍』は既読で、「燦雨」がものすごかったのを覚えている。あの話はほんと、一読すべしだよね……。最近ツイッターのTL上でよく名前を見かけるので図書館で探してみたら一冊だけあった。単行本をぺらぺらめくると本文が好きなフォントで、一発目が「ラタトゥイユ」。野菜を取るには便利なのでこの夏に三回(=三週間分)くらい作り、面倒だから明日もこれでいっかなーと考えてたところにラタトゥイユw 蒸し焼きにするだけなのでこだわらなければ簡単だよね。というのはさておき。短編集かと思いきや連作短編でした。カイというジゴロ女とその周辺。
 やっぱり不倫(片方は主婦)が多いな。個人的にはフリー同士の二人がオープンな関係を結ぶ話が好きなんだけど、「ジゴロ」のように子供のために契約を結んだ夫婦というのもなかなか好きなので、特に忌避感もない。文章の温度が良い感じでつい一気に読んでしまった。「ラタトゥイユ」やカイ視点の、淡々とした一人称の語り口が特に好きかな。このくらいの温度というかテンションは実にいいですね。恋愛ものは一人称で読みたいってのもあるしね。引き続きいくつか読んでみるわ。
 どんなにきれいな男でもペニスをもっており、そしてペニスは勃起する。そのあからさまな変化は滑稽で、コンドームをつける手続きは興ざめで、挿入してからの動きは愚鈍ですらある。(「ラタトゥイユ」)

 と言うくだりには笑ってしまったw 私は勃起とコンドームにまつわる滑稽さ@フィクションが大好きなのでそういうのもたまにはいいものですよ、と思うのである。男同士に限るがな! もうこの年になるとヘテロ恋愛フィクションにはお腹いっぱいで、よっぽど好きな作家でないと手には取りませんよ。