Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ジョージ・R・R・マーティン『洋梨形の男』  ★★★★☆

洋梨形の男 (奇想コレクション)
洋梨形の男 (奇想コレクション)
ジョージ・R・R・マーティン,中村 融
 都会に潜む“洋梨形の男”の恐怖を描いた傑作ホラーの表題作をはじめ、身勝手な男が痩身願望の果てに“猿”に取り憑かれる「モンキー療法」、変わり果てた昔の友とのおぞましい再会譚「思い出のメロディー」、ひとりの作家の内面に巣くう暗黒をあぶり出す「子供たちの肖像」、酒場のホラ話ファンタジー「終業時間」、チェスの遺恨を晴らそうと企む男のSF復讐劇「成立しないヴァリエーション」の全6篇を収録。ネビュラ賞ローカス賞ブラム・ストーカー賞受賞。(Amazon

 読んだのいつだっけ……今日返した。どの話も毒があってすっごく面白かった。巻末見るとこれホラーセレクションらしいね。ホラーというと貞子や花子さん的な和製ホラーの先入観が強すぎて、海外ホラー読んでもこれってホラーなんだ? って思う。特にこれは。見えそうで見えない恐ろしさ、みたいなのがあるじゃないですか。でもガンガン見えてるんだよね。
 マーティンによれば優れたホラーとは「大きなものについての物語だ。希望と絶望。愛と憎しみ、欲望と嫉妬。友情と思春期と性の目覚めと怒りに着いての、孤独と疎外と狂気についての、勇気と怯懦についての、危機に瀕し苦悩する人間の肉体と精神と魂についての、終わり内自己矛盾に悩む人間の心についての物語」であって、「人間の魂の影、われわれみんなの心の奥に棲みついている恐怖と怒りを覗き込むのだ」らしいです。もうジャンル分けとかどうでもいいね。笑
 全体的にいやーな感じで後味最高だった! 「終業時間」は気の利いた掌編で、箸休めには最適。「成立しないヴァリエーション」は最後を締めくくるにふさわしい前向きエンディング。いい伴侶じゃないか……みんな幸せになってくれ……。毒は他の四つか。