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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

伊藤計劃『虐殺器官』  ★★★

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
伊藤 計劃
 9・11以降、激化の一途をたどる“テロとの戦い”は、サラエボが手製の核爆弾によって消滅した日を境に転機を迎えた。先進資本主義諸国は個人情報認証による厳格な管理体制を構築、社会からテロを一掃するが、いっぽう後進諸国では内戦や民族虐殺が凄まじい勢いで増加していた。その背後でつねに囁かれる謎の米国人ジョン・ポールの存在。アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊のクラヴィス・シェパード大尉は、チェコ、インド、アフリカの地に、その影を追うが…。はたしてジョン・ポールの目的とは?そして大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?―小松左京賞最終候補の近未来軍事諜報SF。(Amazon

 虐殺器官とは? という問いには早いうちから答えをくれていたので、最後は何で驚かせるつもりかなあ(ミステリ脳)と思っていたら素敵なエピローグでした! そうこなくっちゃ! エピローグ以前までは面白く読んでたけどこれで終わったら残念、と思っていたので安心した。こういうオチが欲しかったんだ。
 全体的に何となくラノベっぽい感じがあるのはデビュー作であり作者が若かったからかな。人類学にしろ言語学にしろ、もうちょっと個々の要素の描写・説明を詳しく入れてほしかった。色々盛り込んでいる分薄味になってしまっているような。言語というとイーガン『TAP』とかあるしさあ。戦争描写もこないだ『本当の戦争の話をしよう』を読んだばかりだったので……まあ、あれと比べちゃいけないけどw
 日本人の書く欧米舞台の小説の文章に違和感があるってのは、翻訳家の問題かもしれないと思いました。同じ内容を英訳して、大森さんや山岸さんあたりに翻訳しなおしてもらえば、違和感は消えてしまうのではないか……という気がするw 多分中身じゃないんだよな。文体と文章構造なんだよな。中身にうそ臭さを感じられるほど私は欧米の生活を知らないからな。
 しかし「ゼロ年代SFベスト」国内篇第一位ってのはちょっと過大評価なんじゃないかしら? 私の好みかなあ。期待した分拍子抜けだった。
 遺作となってしまったハーモニーと短編も読みます。この若さで死んじゃったのは本当にもったいないよなあ。小道具としてはやはり肉が……肉のインパクトが……これ映像化したらちょっと気持ち悪いよねw 捕鯨/海豚問題なんて目じゃないよね。このアイディア米作家にやってほしかったわw
 あ、台詞内の三点リーダは全部省いていいと思う。笑