Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ロベルト・ボラーニョ『通話』  ★★★★☆

通話 (EXLIBRIS)
通話 (EXLIBRIS)
ロベルト ボラーニョ,Roberto Bolano,松本 健二
『通話』―スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と“僕”の奇妙な友情を描く『センシニ』、第二次世界大戦を生き延びた売れないフランス人作家の物語『アンリ・シモン・ルプランス』ほか3編。『刑事たち』―メキシコ市の公園のベンチからこの世を凝視する男の思い出を描く『芋虫』、1973年のチリ・クーデターに関わった二人組の会話から成る『刑事たち』ほか3編。『アン・ムーアの人生』―病床から人生最良の日々を振り返るポルノ女優の告白『ジョアンナ・シルヴェストリ』、ヒッピー世代に生まれたあるアメリカ人女性の半生を綴る『アン・ムーアの人生』ほか2編。(Amazon

 おもしろかったー! 一日で読みきっちゃうのもったいなかった、この人も若くして亡くなってて三冊しかないので……短編集はこれ一冊だなんて惜しすぎる。皆マルケス並に長生きして書いてくれ。
 ラテンアメリカ作家、自分が亡命してたり留学してたりする率が高いから何を読んでもグローバルに登場人物が移動している印象。「アン・ムーアの人生」とか読むと、こんな行き当たりばったりでも生きていけるものなのかな……いきなり電話かけて住まわせてもらうとかすげえ……と感心する。人生ヒッチハイク。いっそ銀河ヒッチハイク!笑
 最初に読んだ「文学の冒険」「通話」の二つが特別好きかもなあ。でも他の話も全部面白かったな。全部面白かったし、ボルヘスとは違って知識なしでも十分楽しめたw ラテンアメリカは詩人と文学の賞が本当によく出てくるね、作家が書いてるんだから当たり前かもしれないけど、詩人だらけだ。
 語り手と話の中心人物の違う話がほとんど。作中話(といえるのかどうか)に夢中になってくるとすぐに枠組みを忘れるので、ラストでぽかんとして冒頭に戻って納得することがしばしばw 小説らしくいちいちドラマチック……だったような気がするので飽きない。そもそも一話が短い。
 それにしても短編集がこれ一冊だなんて! 惜しまれるの一言だよ。せっかくだから熟読して原書を読んでみようかな。授業で取り扱ってたくらいだから図書館に入っているはず。卒業したら洋書なんて滅多に借りられなくなってしまうのだから……あの図書館から離れたくない!