Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ガルシア・マルケス『愛その他の悪霊について』  ★★★

愛その他の悪霊について (新潮・現代世界の文学)
愛その他の悪霊について (新潮・現代世界の文学)
G. ガルシア・マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,旦 敬介
 愛は成就されず、成就されるのは愛でないものばかり。十二月の最初の日曜日、十二歳になる侯爵のひとり娘シエルバ・マリアは、市場で、額に白い斑点のある灰色の犬に咬まれた。背丈よりも長い髪の野性の少女は、やがて狂乱する。狂犬病なのか、悪魔にとり憑かれたのか。抑圧された世界に蠢く人々の鬱屈した葛藤を、独特の豊饒なエピソードで描いた、十八世紀半ば、ラテンアメリカ植民地時代のカルタヘーナの物語。(Amazon

 マルケスを恋愛小説カテゴリに入れるのは抵抗があるが、愛ってタイトルにも入ってるし、何が突出してるかって言ったら間違いなく愛なんだよな……恋愛じゃないんだよ。愛だよ愛。
 これでマルケス二冊目。偶然にもコレラに続いて「愛」で、愛……激しく愛でした。この人の文章読むと「愛だ!」って感じがするね。唾吐きかけるところで私もうっかり興奮しちゃったよ……途中すごいじりじりした。
 陰鬱ってほどではないけど結構あっさり登場人物が片付いていって(笑)、めでたしめでたしとは程遠く。結局何なんだとナンセンスなことを思わずでもないが、むんと迫る熱気とエネルギーを味わってればいいのかな。語り口は普通なのに(時折うおお! と瞠目する文章が差し挟まれてるけど)。いや、普通っていうか、そんな変なもんじゃないっていうか……率直に物語を綴っている感じ。読者に感情移入させるようなものじゃないね。描写は細かい。医者の台詞が印象的だった。
「性というのはひとつの才能で、私にはその才能はないんだ」

 私にもありそうにありません。