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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

P.G.ウッドハウス『ジーヴスと恋の季節』  ★★★★★

ジーヴスと恋の季節 (ウッドハウス・コレクション)
ジーヴスと恋の季節 (ウッドハウス・コレクション)
P.G. ウッドハウス,P.G. Wodehouse,森村 たまき
 百に及ぶウッドハウスの全小説中もっとも複雑で凝りに凝ったプロットを持ち、英国ウッドハウス協会元会長をして“全作品中のベスト”と言わしめた傑作長編小説。絶好調ユーモア・シリーズ第8弾。(Amazon

 視界の及ぶ限り自分が、おば、おば、おばの大海原を見渡していることに僕は気づいた。背の高いおばさんがいた。背の低いおばさんがいた。太ったおばさんがいた。痩せたおばさんがいた。低い声で会話を続けていて、それに誰ひとりまったく注目していない様子のおばさんがいた。これがエメリン・デヴリル嬢のいつもの慣行で、彼女がコーキーがキチガイだと語っていたおばさんであることを、その後僕は知ることになる。

 ウッドハウス作品にとっておばさんという生き物には特別な意味があるので、おばさんを五人並列させるだけでうひゃーってな効果があります。
 長編の中でも一二を争うほど好きな話。ハドックとバーティーが酒盛りしながら替え歌するとこがたまらない。あのシーンが近づいてくるだけで笑う。キャッツミートとガッシーが漫才するところも、最後らへんのおばさん方の描写もたまらない。愉快の一言!