Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

恩田陸『象と耳鳴り』  ★★☆

象と耳鳴り
象と耳鳴り
恩田 陸
「あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです」退職判事関根多佳雄が博物館の帰りに立ち寄った喫茶店。カウンターで見知らぬ上品な老婦人が語り始めたのは、少女時代に英国で遭遇した、象による奇怪な殺人事件だった。だが婦人が去ったのち、多佳雄はその昔話の嘘を看破した。蝶ネクタイの店主が呟く彼女の真実。そしてこのささやかな挿話には、さらに意外な結末が待ち受けていた…。(表題作)ねじれた記憶、謎の中の謎、目眩く仕掛け、そして意表を衝く論理! ミステリ界注目の才能が紡ぎだした傑作本格推理コレクション。(Amazon

 恩田の中ではちゃんとミステリしていると聞いた一冊。うん。ミステリしてた。でも、私は恩田に論理を求めていないのかもしれない(笑)雰囲気と感情と得体の知れなさで突っ走ってほしいのかもしれない……うまくいくかは博打だが。彼女の本ってまさしく内容よりも印象として刻み込まれるタイプだからなあ。ミステリを読みたいときには物足りない感じだし、それなら答えが明示されないままでももっと勢いのある方が楽しいかも。
 デビュー作である『六番目の小夜子』の登場人物、関根秋の父・多佳雄が中心的な探偵役。秋は春・夏・秋の三人兄弟だったらしく、長男の春も探偵してます。秋は残念ながら出てこない。割と好きだった覚えがあるので悔しい。春は春でオタク女子の心を鷲掴みなキャラ造詣だと思うんだが。オタク女子一般というか私がピンポイントで弱いだけだろうか。いや、恩田ファンが多いのは、男性の造詣が女性のツボをついてくる点が理由の一つだと信じて疑わない……!
 最後の「魔術師」は恩田っぽいなと思った。