Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

東川篤哉『館島』  ★★★☆

館島 (ミステリ・フロンティア)
館島 (ミステリ・フロンティア)
東川 篤哉

 巨大や螺旋階段の下に倒れていた当主の死因は、転落死ではなく墜落死だった!? 天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘にふたたび事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう! 瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルな筆致(!)で描いた意欲作。『密室の鍵貸します』でデビューした気鋭が放つ、大トリックと謎解きの面白さを楽しめる本格ミステリ。(Amazon


 おお! 久々に新本格ってものを読んだ気分だ! だよな、タイトルがタイトルだし、十角館にも言及してるし、だよなあ! 嵐の孤島に建つ奇妙な館で起きる連続殺人ときたら、常人には思いつかぬような大トリックを使ってほしいじゃないですか。『斜め屋敷の殺人』は私の島田ベストだよ(御手洗シリーズの途中までしか読んでいないけど言い切りたい)。バカミスと紙一重だがそれがいい! ううん、何を言ってもネタバレになるので困るわ。許してくれ。
 コミカルさは健在だけど、視点は一環して地に着いてるね。登場人物が俯瞰することはあっても、メタではないね。個人的にはこっちの方が好きだな。物語が語られているというのを意識するより、入り込みたい性質なので。そして動機は今回も斜め上にぶっとんでいた。こういう方向が好みなのかな、作者。私は嫌いじゃないぜ。でも殺されてしまった長男が哀れだとは思う(笑)あと微妙な関係の男女がいい味を出している。そこで情事になだれこまれると一気に冷めるからさ(『三毛猫ホームズ』を思い出しつつ)!
 ミステリ・フロンティアの想定もなかなか好きなんだけど、この表紙はすごいねえ。インパクトあるね。でっかいからくり隠してますといわんばかりのタイトルがどどんと。そういえばミステリ・フロンティアは単行本も文庫もフォントが一緒っぽい。何てフォントだろう。すっきりしてて好きなんだ、読点が大きすぎる点を除いて。

 

 ネジときたか! 巨大なナットとネジか! ランドルト環に何か隠されているのは確実だったけど、ネジの溝だったとはね! いやーこの手のトンデモ館って面白いな。何の動力で上下するんだ? こりゃ推理できないよ! でもそれが気持ちいいのが新本格というか。度肝を抜いてほしいんだよな。
 刑事がオトボケなのは仕様なんでしょうか。