Memoria de los Libros Preciosos

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津原泰水『たまさか人形堂物語』  ★★★★

たまさか人形堂物語
たまさか人形堂物語
津原 泰水
祖母の形見の零細人形店を継ぐことになったOL澪。押しかけアルバイトの人形マニア、冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、お店はそこそこの賑わいを見せていた。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ、今日も傷ついた人形を抱えたお客がやってきて澪たちは東奔西走することに。チームワーク抜群の3人の活躍が始まる。(Amazon

 好きな作家の新作とあれば喜ばないわけにはいかないし、実際良書だった。フィルターかかってるから贔屓しまくるけど、独特な台詞まわしが大好きなんだよね。感嘆・疑問符をあまり使わないから淡々として見える、でも感情が滲んでくる。地の文ももちろん好きですよ。
 ラストの盛り上がりをさらっと流す傾向があって、本書は特にそれが顕著かと。最後のページを捲り、私は泣かされたかったんだと気付いた(笑)もう一押しあれば絶対泣いてたもん。ルピナス探偵団が好きなのは、その一押しをやってくれているからかも。『赤い竪琴』はあれで十分なんだけどなあ。この本だったらシムさんがベタな台詞を言ってくれてもよかったと思うなあ。こんなにあたたかいエンディングなんて滅多にないから、その内容だけで満足するべきかもしれないけど。