Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

辻村深月『スロウハイツの神様』下  ★★☆

スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)
スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)
辻村 深月

『スロウハイツ』二〇二号室。そこには、わたしたちの神様が住んでいる。人気作家チヨダ・コーキが暮らす『スロウハイツ』の住人たちは、平和な日々を送っていた。新たな入居者、加々美莉々亜がくるまでは―。コーキに急接近する莉々亜の存在が、不穏な空気を漂わせるなか、突如判明した驚愕の事実。赤羽環のプライドを脅かすこの事件は、どんな結末を迎えるのか……。環を中心とした『スロウハイツ』の環は、激しい衝突と優しい修復を繰り返しながら、それでもゆっくりと着実に自分たちなりの円を描いていく。未成熟な卵たちが、ここを巣立つ時とは。(Amazon


 綺麗に伏線が回収されていてまとまったことはまとまったんだけど、やっぱり遠回りしているように感じられるなあ。色々削って、もっとシンプルにしてほしかったかも。愛だ! という結論自体は大変気に入ってます。明かされた事実はストレートすぎて、そう来ちゃうんだ! と思った(笑)そのストレートっぷりはいいんだ、しかしそれならもっと以下略。あと地の文が一人称のようでいて三人称(のつもり?)なために、アンフェアだと思ってしまった。何でも分かる探偵+ちょっとお馬鹿な助手コンビって、フェアプレーに最適なんだね。
 登場人物に肩入れできなかったのもイマイチだった理由かな。私が一番好きだった黒木さんは、そこまで掘り下げてもらえなかった(笑)いいでしょ黒木さん。コウちゃんと黒木さんの会話がダントツかわいいもん。コウちゃんの前では子供っぽいところも見せるとか、喧嘩売ってんのか。なのに仕事でそこまでハイパークールになれるってのは、もはや尊敬するしかないでしょ。

 

 環はコウちゃんの小説を読んで生きてきました、というために脚本家になり、コウちゃんが「天使ちゃん」の環を見て新作を書き出した。何かをつくりだす原動力は愛だ! という筋は分かるんだけどさあ。
 環が倒れ、他の皆が鼓動チカラの話を終わらせるために奮闘するシーンは好きです。そういう円満で爽やかな解決は好きです。