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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

エドモンド・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』  ★★★★

フェッセンデンの宇宙 (全集・シリーズ奇想コレクション)
フェッセンデンの宇宙 (全集・シリーズ奇想コレクション)
エドモンド・ハミルトン,中村 融
 史上最高の科学者フェッセンデンが実験室の中に宇宙を創った!世界中の言葉に翻訳された、名作中の名作「フェッセンデンの宇宙」をはじめ、代表作「向こうはどんなところだい?」「翼を持つ男」、切ない怪奇小説「帰ってきた男」、ショート・ショート「追放者」、さらに本邦初紹介作として「風の子供」「凶運の彗星」「太陽の炎」「夢見る者の世界」の4篇を含む、全9篇を収録。(Amazon

 今まで読んだ奇想コレクションの中ではぶっちぎりに読みやすい。ひっかかるところが全然ない。すんなり。「大衆向け」のスペースオペラを書いていたからかしら。本当に癖がない。SF入門本としてもいいんじゃないだろうか。
 まずSFっぽいのから。「フェッセンデンの宇宙」は以前SFアンソロジーで読んだことがあった。何度読んでも傑作だね、これぞSFの代表作品といったところ。「凶運の彗星」、科学の進歩も一緒に感じるね(笑)「追放者」は皮肉の聞いた素敵なショートショートだった。こういうの大好きだ。「太陽の炎」、私にとってはむしろ希望かも。私たちだけだったら恐ろしいもん。
 その他分類の難しい話。「風の子供」はお母さん風のラストでじんわり涙ぐんだ。流れや結末が想像できるけどくすりと笑わされるのが「帰ってきた男」。自分が死んで周囲がそうだったら……と思うと笑っちゃいけないのかもしれないね。主人公は善人そうなのに。「翼を持つ男」は突然変異で翼を持って生まれた男の話。最初から最後までロマンティックだった。綺麗な終わり方。
 よかったのはやはり「向こうはどんなところだい?」。これはよかったね。宇宙への進出はロマンだけではないって、小川一水第六大陸』でも描かれていた覚えが。
「夢見る者の世界」を読んで、ああ私は本当にファンタジーが駄目だわと思った。ヘンリーの世界がなかったら読めなかったかも。
 読みやすいだけにさらっと流せてしまうのはもったいないかも。