Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

若竹七海『猫島ハウスの騒動』  ★★★

猫島ハウスの騒動 (カッパ・ノベルス)
猫島ハウスの騒動 (カッパ・ノベルス)
若竹 七海
 葉崎半島の先、三十人ほどの人間と百匹を超える猫が暮らす通称・猫島。民宿・猫島ハウスの娘・杉浦響子は夏休みを迎え、家業の手伝いに精を出す日々を送っている。そんなある日、ナンパに勤しむ響子の同級生・菅野虎鉄が見つけてしまったのはナイフの突き立った猫の死体、いや、はく製だった!? 奇妙な「猫とナイフ」事件の三日後、マリンバイクで海の上を暴走中の男に人間が降ってきて衝突した、という不可解な通報が! 降ったきた男は「猫とナイフ」事件にかかわりがあるようだが……。のどかな「猫の楽園」でいったい何が!? 真夏の猫島を暴風雨と大騒動が直撃する!奇妙な事件に奇矯な人々、そして猫・猫・猫……ユーモアとシニカルを絶妙にブレンド。コージー・ミステリの名手、若竹七海の真骨頂。

 若竹七海なのに、後味がいい……だと? 葉崎シリーズの前二冊を私が既に読んでいただと(名前が出てきた程度みたいだけど)? 若竹作品を読むのが一年半ぶりだと? おかしいなあ、猫島の話を見かけてあー新作に皆湧いてるーと思ったのはつい最近のはずなのに。今年出たのはホラーの短編集なのか。いつの間にか結構読んでるんだな。ベストは以前出した三冊に変わりないです。
 この地に足のついた感じ……好ましい……。書籍関連の仕事をしているおばさんから話を聞いているような、読みやすくそれでいて癖のある文章。ブラックユーモアのセンスがずば抜けてるんだろうな。現実味あふれるいやーな話をしていても、他の人の文章で読むのとは、全然違うんだよなあ。
 若竹さんの描くキャラクターは悪役含め好きだ。特に女性は、飾ってないのがいいのかな。割と欲望に忠実なとことか。嫌なことを考えていても嫌らしさがない。かわいさに重きを置いてないとこもいい。したたかなの。私にとって女性作家・女性一人称のトップは若竹さんです。というか葉村晶です。
 でも本当に毒が少ないんだよ! 若竹七海といったら、事件解決後に明かされるぞっとする悪意が美味しいんじゃないのさ。麻薬だよ。今回はどんなものが……とわくわくしてたら、いい話だった。すごくいい感じに終わった。もちろん面白かったんだけど、ちょっと拍子抜け。『悪いうさぎ』並の毒が食べたいです。
 修学旅行の件が最も気になる謎だったのに、明かされないなんて! これフォローあるのかしら。一番思わせぶりに描写しておいて、おあずけとは!