Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』  ★★★★

不思議のひと触れ (シリーズ 奇想コレクション)
不思議のひと触れ (シリーズ 奇想コレクション)
シオドア・スタージョン,大森 望

 ちゃんと働いて給料をもらい、だれにも憎まれず、それを言うならだれにも好かれない。どこにでもいるそういう平凡な人間に不思議のひと触れが加わると……? 表題作をはじめ、円盤は女になにを話したか? 魅力の結晶「孤独の円盤」、ベスト級のホラー「もうひとりのシーリア」、名高き「雷と薔薇」、少年もの代表作「影よ、影よ、影の国」、単行本初収録の「裏庭の神様」「ぶわん・ばっ!」、さらに幻のデビュー作「高額保険」ほか本邦初紹介の3篇(「タンディの物語」「閉所愛好症」)を含む、全10篇を収録。(Amazon


 すごかった!
 解説曰く、ディックと並ぶSFの巨頭だそうで。「アメリカ文学史上最高の短編作家」とも言われているみたいね。SFにも米文にも疎いけど、すごいのは分かるよ。『海を失った男』を読んだときは、こんな突拍子もない話を考える人が山ほどいるんだろうかSFというジャンルは……と驚くことしきりだったけど、SFの中でもすごい人なわけですね。私の頭では理解しきれないのが残念!笑
 私にとってはスタージョンの話が巨大なフラッシュだよ。一つ一つの話が鮮烈。冒頭に掴みの部分がある話もあれば、テレビのチャンネルを変えたように既に始まっているドラマを途中から視聴しているような話もある、というのは一般的なことだと思うけど、そこから読者を引き込む速さが尋常じゃない。わけがわからなくても引力からは逃れられない。さすが最高の短編作家。
 孤独が書かれることが多い分、それに対する救済もテーマなんだね。一人で死んでいくだけじゃない。
 解説にたくさん書いてあるから満足しちゃったな。恐ろしさを感じさせる子供を書くのがうまいと思った。子供だからこその不気味さというか。ガジェットが手垢にまみれてるとか古いとか言われても、SF初心者なので問題ありません(笑)

 

「ぶわん・ぱっ!」は、マニュエルを追い出すことによって最高のバンドでドラムを叩けるようになったってこと? 馬鹿のために解説を、誰か!