Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

シオドア・スタージョン『海を失った男』  ★★★★

海を失った男 (晶文社ミステリ)
海を失った男 (晶文社ミステリ)
シオドア・スタージョン,若島 正
 これは……よくわからないがとてつもない引力……!
 白痴の少女の美しい手に魅入られた青年ランは、その手を我が物とするために少女の家に移り住むが…エロスとタナトスの極致ともいうべき異形の愛をえがいた絶品「ビアンカの手」、頭と左腕を残して砂に埋まった男の内的世界を追求して圧倒的な「海を失った男」、交通事故で妻を亡くした男が、墓地で出会った不思議な男に墓を“読む”術を習う「墓読み」の三大傑作に、本邦初紹介の力作中篇「成熟」「三の法則」「そして私のおそれはつのる」、さらに名短篇集『一角獣・多角獣』から「シジジイじゃない」「ミュージック」を収録。めくるめく思考のスリルと異様な感動に満ちた不滅のスタージョン・クラシックス。(Amazon

 「ビアンカの手」はまだ分かりやすいんですよ。エロスとタナトス、まんま。「墓読み」もすっきりしてる。しかし他はよくわからない!笑 よくわからないけどすごい! 短い話から順番いったんだけど、どれもこれも一度読み出すとのめりこんでしまうんだな。文章の密度が濃いので中篇でも結構長く感じたよ。あーこれ読み出したら止まれないわ、でも読まないわけには……とずるずるしがみついて、息抜きがてら半日で終えてしまった。もったいない気もする! 「成熟」が好き。
 くだけた文体で云々と解説にあったように(?)一文一文がきっぱりしていて、有無を言わせぬ勢いを持っていた。私にとってのSFってそういうイメージなんだよね。作家は英米で、簡潔な文章なのに情報過多で、眩暈がして……あれだ。イーガン。SFにはエンタメと哲学の軸がありますね。
 「海を失った男」って、小川一水『老ヴォールの惑星』に収録されてる「漂った男」の元ネタかな。読んだの随分前で解説がついていたか忘れちゃった。海の有無、生還するか否かとか、「海を失った男」の反対を取ったのかなって。「漂った男」は傑作だったなあ。失った男は難しかったな(笑)