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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

P.G.ウッドハウス『ウースター家の掟』  ★★★★★

ウースター家の掟 (ウッドハウス・コレクション)
ウースター家の掟 (ウッドハウス・コレクション)
P.G. ウッドハウス, Pelham Grenville Wodehouse, 森村 たまき
 長編の方が面白いな! 登場人物はそこまで多くないのに、バーティーを襲う事態は極めて複雑で、これでもかこれでもかと難題が降りかかってきて、ごめんなさい笑います。文字通り笑います。家ですら不審者扱いなのに公衆の場で読んではいけないよ。
 バーティーついに刑務所入りか? 極北的理不尽美少女の無理難題を前に、またまたスープに浸かり続けるご主人様。ありとあらゆる難問を解決し続ける天才執事ジーヴス、今回のお手並みはいかに。(Amazon
 ダリア伯母さんの愛情には私も感動を揺さぶられずにはおれなかったよ。バーティーが愛されて何よりだ。「友人を大事に」「女に恥をかかせない」という掟を遵守してしまうバーティーは本当に愛すべきおバカなご主人様なんだ。
 解決した、と思ったらもっと大変なことが待ち構えている。一息つけそう、と思ったらそこにあってはいけないものが見つかってしまう。読者の予想通りでニヤリとしたり斜め上で噴出したりするけれど、ジェットコースターは無事に止まるんだ! 作者とジーヴスを信頼してるから問題ない。きっとうまく収まるのさ! しかしこれが一日の出来事だなんて信じられない……あんなにぎっしりハプニングがあふれてるのに。スピード感は抜群にある、でも一日で収めるには描写が濃密過ぎるんだ。
 今回のラストはバーティーもうまくやったね! 賢くなった! ジーヴスと二人で船旅へ……またとんでもないことをやらかすんだろうとニヤニヤして終わる。
 作者は女性をとんでもない困った生物だと考えているようだけど、女性も男性を別の生き物のように評することがあるからどっちもどっちだ。というかこの作品ではジーヴス以外の登場人物は少なからず馬鹿をやってるからなあ! 戸棚の上に飛び乗って犬を怖がるジーヴスは抜きにしてだよ!