Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

米澤穂信『インシテミル』  ★★★☆

インシテミル
インシテミル
米澤 穂信

 あああ怖かった! クローズドサークルものは怖いよ……風呂で二時間以上かけて読み終えるまで息がつけなかった。もう私は風呂にミステリを持ち込むべきじゃない。

 充実した学生生活を送るために是非ともクルマが欲しい大学生、結城理久彦。バイトでもするかと情報誌を探しに立ち寄ったコンビニで、彼は指一本分の借財があるという令嬢に出逢います。須和名祥子と名乗った彼女は、高額報酬の仕事を探していると言いました。
 彼女のためにバイト情報誌を繰る結城。須和名はふと、ある仕事に目を留めます。『報酬:1120百円』。百の字が誤植でなければ、この仕事の報酬は十一万二千円の計算になります。
 間抜けな間違いもあるものだと思いながら、冗談半分で応募する結城。しかし、それが彼の運の尽きでした。
 案内されたのは、地下空間。名づけて〈暗鬼館〉。
 参加メンバーは十二人。
 そしてラウンジの円卓には、十二体のネイティブアメリカン人形が。(公式サイトより)


 ミステリやろうってんだから、すんごい身構えながら読むでしょ。誰もいなくなるんじゃないか、あいつが犯人なんじゃないか、誰か狂いだすんじゃないか、これ叙述なんじゃないか……何もかも信用できないから疲れたわ。まあ、私は自分で考える読者ではないので、探偵役の説明聞いて頷いたり突っ込んだりするだけなんだけど。
 十二人の部屋は鍵がかからない。バリケードもできない。「夜」に出歩くと、ペナルティが課される。部屋にあったおもちゃ箱には各々別の凶器が入っている。七日間をそこで過ごさなくてはならない。二十歳前後の学生が多かったので自分と重ねてしまってさらにぐええ。
 しかも後味がものすごく悪い。米澤さんはあんな温厚そうな方なのに、よくここまで書けるもんですね。古典なんかだと、もっと悪意が純粋というか、漫画で恐縮ながらコナン的でわかりやすいんだけど、幽白の仙水のようなアレ(漫画ばっかだ)。動機が嫌だよ。裏で仕組んでいる絶対者がいるのも嫌。現代ものは古典とは違った恐怖が這い登ってくるんですが。
 しかし面白かったことは否定しない。面白かったです。このもやもやも、嫌いだけど味わいたい類のもので。道尾に似たものを感じます。穂信が先だけど。この手の話の「趣味が悪い」は褒め言葉ね。 ====  西野がトリガーで、関水は家族あたりを拉致でもされて十億とってこいって脅されてたんですか。その二人を送り込むことで、十二人はめでたく殺しあう、と。……嫌だあ! 岩井も悪い奴ではなかったのに赤信号に突っ込んでるし、須和名は実験をする側の天上人だったし。真木や箱島は好きなキャラクター造詣だっただけに残念です(笑)
 結城が最後まで裏切らなかったのが一番の驚きかな。叙述ではなかった。そこらへんは公平でしたね。