Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

エドワード・W・サイード『オリエンタリズム(上)』  ★★★★

オリエンタリズム〈上〉 (平凡社ライブラリー)
オリエンタリズム〈上〉 (平凡社ライブラリー)
エドワード・W. サイード, Edward W. Said, 今沢 紀子
 オリエンタリズムとは、我々の世界と異なっていることが一目瞭然であるような(あるいは我々の世界にかわりうる新しい)世界を理解し、場合によっては支配し、操縦士、統合しようとさえする一定の意思または目的意識――を表現するというよりはむしろ、そのものである。なによりも、オリエンタリズムとは言説(ディスクール)である。

 眠気と戦いながら、あまりにもわからないところは流しながら、とりあえず上巻を読みきった。オリエンタリズムというか植民地主義の話なので、読んでいてオリエンタルな私は鬱々としてきたよ。東洋の人間のくせに、オリエンタリズムに染まっていること(まさにアラブ世界に対して官能的イメージを抱いている)にも愕然だよ。
オリエンタリズム」とは西洋が専制的な意識によって生み出した東洋理解を意味する。本書(邦題『オリエンタリズム』)はその概念の誕生から伝達までの過程をあますところなく考察した1冊だ。サイードは、東洋(特にイスラム社会)を専門とする西洋の学者、作家、教育機関などの例を挙げ、彼らの考えが帝国主義時代における植民地支配の論理(「我々はオリエントを知っている。それは西洋とはまったく違った、なぞめいた不変の世界だ」)から脱却しきっていないと厳しく批判している。 (Amazon
 私は人類学を専攻していて、この半年間、植民地主義について学んできた。結果、植民地時代は終わったけれどcolonial powerがあらゆる細部に浸透していて、もはや脱却は不可能なのではという話だった。結構絶望的です。その学んできた内容がほぼそのままの形で記されていたので、どうせなら授業の前に読んでおけばよかったなあと思った。
 「東洋は劣っている」「近代化してあげる」「記録してあげる」「再構成してあげる」とか、上から目線が、どうしようもなく苛々するね(笑)ほっといてよ、お前らに細分化やロゴ化していただかなくても結構だよ。そんな症状はこの手の言説に出会った時の第一段階なのねきっと。
 私たちは平等なんかじゃないんだろうね。そんな昔からある意識が、二十一世紀になったからって消え去るはずないわ。