Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

道尾秀介『背の眼』  ★★★☆

背の眼
背の眼
道尾 秀介

「およそすべての犯罪には少なからず偶然が関与しているものだ。犯罪にかかわらず、偶然のまったく関わっていない事象なんてないさ。ごく普通の線の集合が美人を形成するはずなのに、実際の美人に出会うのは稀なようにね。偶然云々で個々の責任を問うてみても詮無いことだよ。犯罪において罪を問われるべきはいつだって、犯意を持った人間以外、誰ひとりいないんだ」


 エンタメだな! ニ段組で400ページ近くあったけど一度も休むことなく読みきった。面白い。文章が簡単で読みやすい。これぞ娯楽。やはり読書は楽しみがなくっちゃね!
 課題なので道尾の本は全て読まなくてはならない。先日、同じ義務を負った友人が「『背の眼』読め! 美形探偵と売れない作家が出てくるぞ!」とわざわざメールを寄越したので何かと思った(笑)それ何て京極? 榎さんと関口?
 実際、榎さん=真備は幽霊を追っているし、関口=道尾(作者と同名)は口下手だったり抜けていたり。まあ探偵の助手なんてすべからく抜けてるもんだとは思うけど……麻耶はともかくとして。あ、道尾は助手ではないな。霊に関する薀蓄なんかも京極っぽい。綾辻も講評で妖怪シリーズのオマージュね、って言ってたな。
 多くの作品がこのミスにランクインされているので、てっきりミステリだと。そしたらホラーサスペンス特別賞だった。探偵と助手がいて、謎が提示されて、論理的(?)に解決して、ってあたりは本格ミステリなんだけどね。背の眼はどう説明するんだよ、と思っていたら普通にホラーでした。読み終えてトイレに行くのが嫌でした。ホラーは苦手だ。
 総評としては、すごく面白かった! ミステリは結末が気になって読み終えるまで離れられない部分があるから、一気読みをよくするんだけど、ここまで読みやすいのはそうそうないよ。らくちんな読書だった。いい意味で。

 

 狐憑き、かあ……それはまだ現実に即したものとして処理できるね。歌川さん(性格には奥さんだけど)があんな残虐なことしてて、普通に接してたと思うと恐ろしいな。亮くんが殺されなくてよかったわー! 死んでたらめちゃくちゃ後味悪かったよ。
 でも眼はね。幽霊はミステリに持ち込めないね。いやミステリじゃないのはわかってるけどさ。
 真備と道尾の並々ならぬ仲に興味津々。シリーズ化してるの嬉しいわ。