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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

島崎藤村『破戒』  ★★★★

国内文学
破戒 (岩波文庫)
破戒 (岩波文庫)
島崎 藤村
「下等人種?」
「卑しい根性を持って、いやにひがんだようなことばかり言うもの、下等人種じゃなくて君、なんだろう。へたに社会へでしゃばろうなんて、そんな思想を起こすのは、第一大間違いさ。獣皮いじりでもして、神妙に引っ込んでるのが、ちょうどあの先生なぞには適当しているんだ。」
「はゝゝゝゝ。してみると、勝野君なぞは開化した高尚な人間で、猪子先生の方は野蛮な下等な人種だと言うのだね。はゝゝゝゝ。僕は今まで、君もあの先生も、同じ人間だとばかり思っていた。」
「よせ。よせ。」と銀之助はしかるようにして、「そんな議論をしたって、つまらんじゃないか。」

 最初の方は、銀之助と丑松にんん? と思っていたけど(笑)、読み進めていくうちにそれどころじゃなくなった。不謹慎な人間ですみません。
 旧社会において極度に卑しめられた部落民出身の小学教員丑松が父の戒めを破り、公衆の前に自らの素姓を告白するまでの激しい苦悩の過程を描く。四民平等は名目だけの明治文明に対する鋭い批判を含み、丑松の苦悩を通し日本の悲劇をえぐり出したこの作品こそ、真に近代日本文学史上最高の記念碑といえよう。(表紙)
 周りの人間が丑松をいちびっているあたりは、読んでいてどうしようもなく焦った。ああバレてしまう。もう隠しておけない。息苦しい。丑松の側に立つ人間でさえ、穢多は卑しいといって憚らない(真実を知らされていないからかもしれないけど)。
 丑松が告白した後の銀之助とお志保の行動には思わず泣いてしまった。あと生徒たち。新世代は徐々に寛になっていくんですね。丑松はいい先生だったんだろうね。
 解説には、本書への批判として、結局丑松は逃げたのであって何の解決にもなっていないとか、あの連太郎すらも穢多を卑しいものとしていたとか書いてあった。でも、生まれたときから自分は卑しいんだと思い知らされてきたら、なかなかそこから脱却できないんじゃないかなあ。それが当たり前になっちゃって。
 日本の階層社会は壊れたわけですが、100年以上経った今も部落は残っていて、差別ってなくならないのかねえと思わずにはおれません。日本国内だけじゃないけど。平和と平等って達成されないから素晴らしいのかな。