Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

草野たき『透きとおった糸をのばして』  ★★★★

透きとおった糸をのばして
透きとおった糸をのばして
草野 たき

「世の中も時計も地球も動いてて、なのにあたしだけが動いてないなんて、死人みたいなもんだよ。あのブリキの人形といっしょ。それに、動かなかったら、先に進めないでしょ。それがどうかしたの?」

 るう子ちゃんは言ってることも、やってることもめちゃめちゃだ。
 でも、めちゃめちゃにならずに、きれいに生きていく方法なんて、あるのかなとも思った。


 すごく良いヤングアダルトを読んだ、という感じがした。好きだなあこれ。泣いちゃったよ。読み始め「百合!?」と思ってしまってごめんなさい(笑)
 親友との関係に思い悩む、中学2年生の香緒(かお)。研究に熱中することで、なにかを忘れようとする、香緒のいとこで大学院生の知里(ちり)。一緒に住んでいた二人のもとに知里の過去を知る、るう子が転がりこんでくる。奇妙な共同生活を送る中で、明らかになる三者三様の苦悩の正体とは? 講談社児童文学新人賞受賞作。(Amazon
 知里がるう子に「充分におめでたいわよ」と言うとこは私もおめでたい気分になりました。よくやったよ! 梨本くんはいい男ですね。
 私はもともとヤングアダルトに並々ならぬ思い入れがあって、今でも一番よく泣かされるし、純粋に物語に入り込んでしまう。お風呂で読み切るのに適度な長さで、お手軽(というと言葉は悪いんだけど)に精神洗浄をしてくれるのがいい。本当に好きなジャンル。とっくにその年代から卒業しちゃったけど、これからもお世話になります。
 草野さんの著作に『ハチミツドロップス』というのがあって、母が「これこの人の本だったの!」と驚いていたので、「うちらが読んだのは石井睦美『レモンドロップス』でしょ」と教えてあげた。似てるけどね。本書をAmazonで見たときの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」をほとんど読んでいた。

 

 バンドの活動が終わっても長引かせたりしないし、ちなみとの関係も修復したとは言いがたいけど、その辺あっさりと受け入れられてしまったらつまらないだろうと思うので、ラストはよかった。