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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

トルストイ『クロイツェル・ソナタ/悪魔』  ★★★★☆

海外文学

クロイツェル・ソナタ/悪魔
クロイツェル・ソナタ/悪魔
トルストイ, 原 卓也

「女性の無権利状態とは、投票ができないとか、裁判官になれないとかいうことじゃないんです。そんな仕事にたずさわるのは、何の権利にもなりませんからね。そうではなく、性関係において男と対等になり、自分の望むままに男を楽しんだり遠ざけたりし、選ばれる女ではなく、自分の望むままに男を選ぶ権利をもつということなんです。そんなのはめちゃくちゃだと、おっしゃるんですか。なるほど。それだったら、男もそういう権利をもたぬことです。現在、女性は男のもっているその権利を奪われています。だから、その権利を償うために、女は男の性欲に働きかけ、性欲を通して男をすっかり支配してしまうため、男は形式的にえ選ぶだけで、実際に選ぶのは女だ、という結果になっているのですよ。いったんこの方法を会得すれば、女はもうそれを悪用し、男に対する恐ろしい支配を獲得するんですよ」

「だから、女性にとってこの解決法は二つしかないのです。一つは、男がいつでも安心して快楽になれる能力を根絶するか、あるいは必要に応じて破棄することです。さもなければ第二の解決法で、これはもう解決策でさえなく、自然の法則を手軽に、乱暴に、真っ向から破ってしまうことですが、この解決策はどこのいわゆる良家でも実行されていますよ。つまり、女が自己の本性に反して、懐胎者と、授乳者と、情人との三役を同時につとめなければならない。すなわちいかなる動物も堕したことのない存在にならねばならぬという解決法です」(クロイツェル・ソナタ


 授業で何度も扱ったのに読まずにいた小説。いや、英語で読もうと二度試みた挙句、二度挫折した小説(笑)トルストイの性に対する考えがモロに出ていて大変興味深いものでした。
 嫉妬のため妻を殺した男の告白を通して、惨劇の理由を迫真の筆に描き、性問題に対する社会の堕落を痛烈に批判した『クロイツェル・ソナタ』、実在の事件に自身の過去の苦い経験を交えて懺悔の気持をこめて書いた『悪魔』。性的欲望こそ人間生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の源であるとして、性に関するきわめてストイックな考えと絶対的な純潔の理想とを披瀝した中編2作。(裏表紙)
 話自体は非常に簡単。「クロイツェル・ソナタ」は妻を殺してしまった男の独白。ほとんどが男の台詞でできている。「悪魔」は結婚前に関係を持っていた女性のことを結婚して子供もできたのに忘れられない男の話。
 トルストイ曰く、性欲は悪であり自然なものではない。性行為が男女差別を生み出すのであり、またそれゆえに男性を支配しているのは女性である。性行為は忌まわしいものなので、極力避けなければならないが、避妊もしてはいけない。結婚は長期の売春と同意である。生殖のための性行為なら許してもいいが、妊娠中のそれはもってのほかである。しかし、男性が女性に抱く性欲は制御不可能なものである。純潔を守れ皆の者ォォォ!笑
 引用の上は「(男→女の)レイプの主体は女性である」みたいな話に似ているなあと思った。それに加えて性行為が男女差別を生むって意見は、フェミや801板での某穴理論に繋がってくるのではないだろうか(無理矢理w)。穴になる方に神聖性などを付与するのは、性行為における上下をひっくり返すためであり、優位なのは棒<穴。どちらの役割もできるのにあえて穴を選ぶその潔さ! みたいな。人によって様々なのでひとくくりには出来ませんけど。
 私はキリスト教徒ではないので、性行為=悪って考えが全くない。性欲がいけないとも思ってない。浮気はよくないかもしれないけど(笑)、適度に発散すればいいんじゃないかと。禁欲が健康に悪いと言うつもりはないが。したければすればいいし、したくなければしなきゃいい。子供がほしくないなら避妊するべきだ。
 でも、トルストイの時代に比べて女性が男性を選べるようにはなったけど、多くの性行為には男→女という図式が伺えるので、割り切れないなあとも思う。私は性的対象として見られることに、少なからず失望を感じてしまう方。「懐胎者と、授乳者と、情人との三役を同時につとめなければならない」ってのは事実だし。粉ミルク使えばいいか?笑