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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

田中芳樹『銀河英雄伝説(7)』  ★★★☆

銀河英雄伝説〈7〉怒濤篇
銀河英雄伝説〈7〉怒濤篇
田中 芳樹
「おれにはまともな家庭など持つ意志もないし、その資格もない。誰よりも卿はそのことを知っているはずではないか」
「さあ、そんなことは知らぬ」
 ミッターマイヤーが突き放したように応じると、金銀妖瞳の名将は彼らしからぬ不安げな表情を一瞬だがあらわにした。
「おい、気を悪くしたのではないだろうな」
「そう心配する理由が卿にあるのか」
 ふたりは顔を見あわせ、苦笑して和解することにした。

「最高指導者は文民でなくてはならない。軍人が支配する民主共和政など存在しない。私が指導者なんかになってはいけないんだ」
「頑固すぎますな」
 遠慮の二文字と疎遠なシェーンコップが、容赦ない表現を使った。
「あなたはもはや軍人ではありません。政府から給料どころか年金すら支給されない無位無官の民間人です。何を遠慮することがありますか」

「……だが、いつか必ず枯れるからといって、種をまかずにいれば草もはえようがない。どうせ空腹になるからといって、食事をしないわけにもいかない」

「なぜなら、えらそうに言わせてもらえば、民主主義とは対等の友人をつくる思想であって、主従をつくる思想ではないからだ」
 乾杯の動作を老元帥はしてみせた。
「わしはよい友人がほしいし、誰かにとってよい友人でありたいと思う。だが、よい主君もよい臣下も持ちたいとは思わない。だからこそ、あなたとわしは同じ旗をあおぐことはできなかったのだ」

 次の巻から大きな戦いがはじまりそう!
 ヤン・ウェンリーの監視役・レンネンカンプ上級大将が同盟軍の不穏分子に拉致され自害した事件の責任を問うため、皇帝ラインハルトは同盟領ハイネセンへの出兵を決定した。彼は同盟市民に事の次第を暴露し、「バーラトの和約」の破棄と再宣戦を布告、ヤンに対しては出頭を要請。だが、同盟政府はヤンに帰還を求めてはこなかった。同盟復帰への道を断たれたヤンはついに、イゼルローン奪回を決意する……。(裏表紙)
 ロイエンタールに不穏な影が見えはじめてどきどきですよ……ミッターマイヤーは男前すぎるぜ。双璧好きだぜ。