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河野博子『アメリカの原理主義』  ★★★★☆

アメリカの原理主義
アメリカの原理主義
河野 博子

 原理主義ファンダメンタリズムを辞書で引くと、聖書に書いてあることが歴史上起こった事実であり、そこに預言された通りのことが起きるとの信条を指す、とある。もともとは、公立小中学校で進化論を教えることに反対し、聖書の記述を科学的、歴史的真実として絶対視する人々の信条を意味する言葉だった。
 これを一つの起点に、聖書にしがみつき科学を理解しない頑迷な人々というイメージを払拭し、極右の反ユダヤ、白人優越主義と袂を分かち、現代の広い層に受け入れられるよう発展してきたのが、宗教右派だ。彼らが一般に訴えたのが、ヨーロッパから新大陸に渡り、米国を建国したプロテスタント清教徒の原理だった。連邦政府の干渉、規制を斥ける建国の原理原則をベースに、「世界政府」を忌み嫌いつつ、米国の使命としての自由の拡大に邁進する――という姿勢、情緒的思考は、米社会の底流に広がり、現代アメリカを彩るアメリカの原理主義を形作っている。


 うー反米になりそう(笑)
 長く特派員としてアメリカ社会の変容を見つめてきた著者が、「社会の座標軸がズズッと右にずれたような変化」を感じ始めたのは一九九〇年代半ば。アメリカ国内で繰り返される不可解なテロ、中絶や同性愛をめぐる深刻な軋轢、信仰の熱心さが生み出す分極化―文化の多様性を拒む何かが、地下からはっきりと姿を現していた。現地での取材、インタビューを積み重ね、著者は、その源流が清教徒による建国思想、過激な反連邦政府意識、白人優越主義などに端を発する、「アメリカ原理主義」ともいうべき宗教右派の動きに結びついていくのを知る。(カバー折り返し)

 

■アメリカの原理をめぐる対立
絶対的な真実や善悪を求める人 VS 何を信じ、大切に思うかは個人の自由と考える人
アメリカは最も自由で、神が人類に与えた最良の国 VS アメリカは、それぞれ歴史や文化のある様々な国の一つ
国家としての統一が重要 VS 多様性はアメリカの強み
西欧文明、ユダヤキリスト教の伝統の重視 VS マルチカルチュラリズム
連邦政府の介入、規制を極力斥ける VS 福祉・教育・災害対応などで連邦政府の機能は重要
中絶は殺人 VS 中絶は女性の選択
同性愛・同性結婚は聖書の教えに背く、自分の身体は神のもの VS 同性カップルにも夫婦と同じ権利、自分の身体は自分でコントロール
自由の拡大はアメリカの使命 VS アメリカに世界を塗り替える特別な使命はない
理想の追求が重要 VS 現実に基づく分析をし、方向性を探る
敵と味方を峻別、敵との宥和・妥協をしない VS 敵と共存の道を探る
国連など国際機関はしんようできない VS 国際機関を通じて世界の平和安定を
先制攻撃論 VS 武力行使国際法のもと制限される