Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ロレンツォ・リカルツィ『きみがくれたぼくの星空』  ★★★★

きみがくれたぼくの星空
きみがくれたぼくの星空
ロレンツォ・リカルツィ, 泉 典子
 これが愛でなくて何だろう。きみのまなざしはぼくが唯一求めていたまなざしで、きみと一緒にいることはぼくが唯一したかったことで、きみといるときだけは孤独を感じないでいられたのに。それは愛だったってことは、いまのぼくならわかる。それは愛なのだ。それをきみに言いもしないで、愛しているときみに告げる喜びを自分から取りあげ、それを聞く喜びをきみから取りあげていたとは、ぼくはなんという大バカ者であったことか! きみといっしょにいるときは怒りんぼではなくなって、病気も老いも、ここにいることさえも忘れていられたのに。

 原書のタイトルは「君はぼくに何を期待してるの?」だろうか。翻訳にあたって変更したのね。
 脳血栓で身体の自由を奪われたトンマーゾは、収容された老人ホームで、知性あふれる女性エレナに出会う。人生の終着点で初めて知った、真実の恋が奇跡を生んだ。メランコリックでユーモラスな、究極のシルバー恋愛小説。(Amazon
 恋愛小説の舞台がイタリアの老人ホーム、主人公は老人。なかなかお目にかかれない設定だね。旅行したときにイタリア人のおじいちゃん(60歳過ぎだと思われる)にナンパされて「bella、bella」とか言われたので、老人ホームにいながら性欲旺盛なおじいちゃん、というのが容易に想像できた。イタリア人って愛する女のために生きていそうだもの! 一人称の「ぼく」もよかったと思う。だってイタリア人、似合うもの!笑
 いつまでたっても人は恋ができるんだなあ。愛せるんだなあ。フィクションだけど、素敵だった。私も生涯現役でいたいものだわ。