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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

米原万理『不実な美女か貞淑な醜女か』  ★★★★

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か
不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か
米原 万里
 言葉というのは、表現の手段であるだけでなく、思考の手段でもあり、いわば人間の考え方の型を如実に反映するものである。通訳するとき、あるいは翻訳するとき、役者はスピーカーや原文作者の思考の型をも他言語に移し替えるのである。だから、さまざまな他人のものの考え方の構造と筋道を、受動的にだけでなく、能動的に実体験できる。まさにこの点が、通訳・翻訳稼業の苦行と魅力の源である。醍醐味である。少なくとも飽きと退屈だけには無縁な商売であると断言しても許されるのではないだろうか。
 米原さんのエッセイ処女作。主に通訳という作業・仕事について、自他の失敗談や笑い話を交えながら楽しく分析していく。面白すぎる。世界は広いなあとつくづく思うのであった。

 今日における日本の英語教育への熱心さ、嫌だなあと常々感じていたんだけど、米原さんも反対しているようだ。小さい頃から英語の本ばっかり読ませて、日本語より英語に堪能な日本人ってどうなの? そこらへんを国際人の定義からはじまり、世界を又にかけて仕事をしている立場から意見されています。そうよね、英語ができる人なんて世界にいくらでもいるんだから! 知り合いに、韓国人と日本人の両親を持ち、両国を行ったり来たりしている人がいるんだけど、私が「バイリンガルでいいですね」と言ったら「どっちの語学も中途半端で、むしろよくないと思う」って言ってました。
 とはいえ、私も日本語の素晴らしさを実感しはじめたのは恐らく大学に入ってからで、いきなり「日本語は素晴らしいんだからもっと味わえ!」と子供に言っても分かってもらえないよね(笑)ロシアの教育には驚いたなあ。今から頑張って日本の古典を読もう。最近本のあらすじを書かなくなっている私はギクリとしました。……目指せ国際人!
 解説には米原さんは美しい、とあるけど、米原さんは自称ブスなのよね。気になる。