Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

古処誠二『UNKNOWN』  ★★★☆

UNKNOWN
UNKNOWN
古処 誠二

「そうだね、負けた方は生涯コーヒーをおごり続ける、というのは?」
「うーん、やめておきます。わたしの方が不利ですから」
「コーヒーの量のことかい? それとも賭け自体のことかい?」
「両方です」


 この作家は初。とても読みやすく面白かった! 大好きな自衛隊ものだしね。んもー出てくる人は皆自衛隊員なんだもの。ときめく。シリーズ追おうっと。
 侵入不可能なはずの部屋の中に何故か盗聴器が仕掛けられた。密室の謎に挑むのは防諜のエキスパート・防衛部調査班の朝香二尉。犯人の残した微かな痕跡から、朝香は事件の全容を描き出す。完璧に張り巡らされた伏線! 重厚なテーマ性! リアリティ溢れる描写力! 熱く、そして端正な本格ミステリが登場した。第14回メフィスト賞受賞作。(裏表紙)
 メフィストというとトンデモな印象があるけど、本書は良い意味で普通でした(笑)こういうのは悪いかもしれないけど、適度な長さと軽さで、適度な登場人物の人数で、適度な事件(殺人ではないってことで)なんじゃなかろうか。熱さはともかくとして、端正で本格。とにかく読みやすい。文章の流れはひっかかるところが多少あったかな。とってつけたような感じが。
 軽い読み口だけどラストは苦め。日本の自衛隊の人たちって、実際どうなんだろう……。入隊するにあたり人生根こそぎ調べられる、ってのはすごいね! どこから入手するんだ情報を。
 ますます防衛庁ツアーに行きたくなってしまった。基地も見学してみたいなあ。

 

  盗聴器が仕掛けられたのではなく、盗聴器入り電話を仕掛けたのであった。中林士長にはフラグが立っていたけど、かわいそうだなあ。桜庭三尉に事故を目撃されたのが運のツキ。脅されて、でも言いなりにはなりたくなくて。
 確かに、今の自衛隊には目に見える目標なんて昇進しかないのかも。

 国防の観点と平穏な暮らしを望む住民の観点――。相反するのにどちらも必要であるという、これ以上ない矛盾に板ばさみとなっていたのだ。
 答えは出なかった。


 自衛隊が近くにいてくれたらすぐ守ってくれていいじゃない(何より自衛隊基地ってときめくし笑)と軽率に考えてたけど、自衛隊がいるからこそ狙われるってのもあるんだよなあ……アンビバレンス。