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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

竹内真『自転車少年記』  ★★☆

自転車少年記
自転車少年記
竹内 真
 たった一人で、好きな方へと走っていける。知らない町を通りすぎ、見知らぬ世界に旅立てる。――きっとそれは、一人ぼっちだからできることだろう。

 そんな景色を眺めて進んでいるうちに、失ったものに対する感情だけで走っているわけじゃないと気がついた。こうして明るい気分で走っていられるのは、自分の中に新しい何かを求める気持ちがあるからだ。眼前に広がる見知らぬ風景そのものが、自分にペダルを踏み込む力を与えてくれるのだ。
 自分は今、見知らぬ景色の一部になっている。そう思うと、身体の組成までが変化していくような感覚を味わえた。息を吸い込んで吐き出すたびに、だんだんと新しい自分に生まれ変わっていく気がする。

 どこで薦められてたのか忘れてしまった。「少年記」ってのが決め手だったんだろうな。
 幼い昇平の乗った自転車がスピードを出しすぎて飛びこんでしまったのは、草太の家の庭だった。ふたりは、その日、生涯の友と出会う。海まで必死にペダルをこいだ。強豪高校にレースで挑んだ。そして、東京発糸魚川行きの自転車ラリーを創った。もちろん素敵な恋もした。爽快無類の成長小説。(Amazon
 少年が影響を及ぼしあって成長していく青春小説は大好物だけど、やっぱり、女性作家が書く少年たちの方が好きだなあ。なぜなら少年たちの彼女とかに興味がないから(笑)二人(伸男を入れて三人か)がもっと閉鎖的で複雑な感情を抱いていてほしいのだ。男性作家だとあっけらかんとしちゃうじゃん! 本当に爽やかでまっすぐに成長しちゃうんだもの! 物足りないー。
 四歳の昇平が、自転車に乗って草太の家に突っ込んでしまうとこから物語ははじまる。目次を見ればわかるとおり、四歳から二十九歳までの彼らが描かれている。年齢は目次にしか書いてないので、章が変わるごとに今何歳なのよ!? って目次に戻ったり。二段組に驚いたけど、これはきっと携帯小説だったゆえに改行が多いからでしょう。含むところもなく、少年たちのようにまっすぐな文章なのでさっさと読めます。
 どうやら文庫はこれをもとに書き下ろしているみたいですね。そんなに違うのだろうか?