Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

あさのあつこ『NO.6 #5』  ★★★☆

NO.6(#5)
NO.6(#5)
あさの あつこ, 影山 徹, 北村 崇

「傲慢になるな。もう少し、ありのままの死を敬え。他人に安らかな死を与えられるなどと思い上がるな。もう二度と、他人の頸に指をかけたりするんじゃない」

 そうだ、ネズミ。ぼくは自信がある。きみの傍らにいる限り、ぼくは、人間であり続けられると確信できる。


 ネズミと紫苑は相変わらずのラブっぷりだったけど……いいんじゃない? そこを切り離してもなかなか面白くなってきた気がする。ストーリーじゃなくて、関係性や個々の感情のうねりが。結構びしばしと伝わってくるし、それを伝える手段が人の苦悩や怒りや葛藤ってのがいい。ほんわかしあわせ、じゃないのがいい。どっかのインタビューで言ってたように、紫苑が理想主義の天然っ子なだけでなく、ダークな一面を見せ始めたのもいい。ヤングアダルト世代に読ませたくなってきたよ。
 『人狩り』によって矯正施設へと送り込まれた紫苑とネズミ。そこは無数の人間の塊が蠢く、この世の地獄だった。生きて戻ることはできるのか。一方、救出を待つ沙布の身体には異変が起きていた――。この都市は、人間を支配しようとしている。無慈悲に人を食らう、支配欲に猛り狂った怪物だ。誰も気がついていないのだろうか。いよいよNO.6の暗部へ。(Amazon
 まああいつらはいずれ結婚すると思うよ?笑 沙布・イヌカシ→紫苑→←ネズミ みたいなことになってるけど。紫苑モテモテだ。あさのあつこの本は同性愛を描きたいんじゃなくて、そういうのにカテゴライズされないような相手への感情なのではと思うけど、だからこそ、ギリギリ同性愛にならないところで踏みとどまってるからこそ、そそられるんだよなあ(笑)罪ですね。

 

「キスしてやるよ」
「え?」
「喉を掻き切る前にキスしてやる。おれが、あんたよりずっと上手に別れのキスができるって思い知ってから、天国に行くといい」
「ネズミ……」
 頬から耳朶まで赤く染まっただろう。熱い。額には、汗さえ浮かんできた。冗談めかした口調だったけれど、冗談ではないだろう。
 狂うにせよ、負傷するにせよ、動けなくなれば、そこで終わりさ。だから喉を掻き切る前にキスを。
 死の接吻。身体の最も深い部分が感応し脈打つ。紫苑はかぶりを振った。どんな蟲惑的なものであろうと、死を誘うものは、拒まねばならない。


 ぶーっ!!(色んなものが吹き出た音)

 友情とか、愛情とか、仲間意識とか、同情とか、憐憫とか、親しみとか、何と呼ぼうと勝手だけれど、どう呼んでも当て嵌まらない。
 損得でなく、欲望でなく、打算でなく、犠牲でなく、他者のために生きられる。


 惚気を聞かされている気分です。これはイヌカシの見解だけど。

「それなら、聞け。これからなんだ。いいな、紫苑、おれにはあんたが必要なんだ」
「うん」
 紫苑は両脚に力をこめ、立ち上がる。辛うじて立つことができた。
「いい子だ」
「うん」


 いやはや、やっぱりBLのレーベルから出版した方がよかったんじゃないかな?