野中柊『きみの歌が聞きたい』 ★★★
きみの歌が聞きたい
野中 柊
彼女は水だ。かたちのない存在感。とどまることも、流れていくこともできる。ひとを溺れさせることも、浮き上がらせることもできる。彼女と一緒にいると、これまで馴染んできた重力の感覚を失ってしまう。(アクアマリン)
あの少年は幾度も、幾度も、私のもとを去る。私を置き去りにする。私をひとりぼっちにする。そのたびに、私は言いようのない心もとなさに怯える。でも、別れは再会のためにある。私たちが互いを突き放すのは、ふたたび、互いの存在を抱きしめるため。繰り返し、その喜びを味わうため。(赤瑪瑙)
月の石、アクアマリン、赤瑪瑙、クレソプレーズ、真珠