Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

川島誠『800』  ★★

800
800
川島 誠

 もうすぐ、あと数秒で八〇〇メートルは終わる。そう、ぼくは、負けるかもしれない。でも、ぼくは、一生八〇〇メートルを走り続けるだろうと思う。これから、死ぬまで。
 ほら、前に言ったように、ぼくたちTWO LAP RUNNERは、そういう遺伝子を持って生まれてきてしまった生き物なのだ。


 速いスピードで走りながら、駆け引きしたり、走路妨害したり、特には相手を突き飛ばしたりする「走る格闘技」と呼ばれ愛されている、八〇〇メートルという種目。一度も陸上競技をきちんと見たことがないけど、これはとても頭を使う競技らしいね。二百メートルが通常の校庭にあるトラックの長さだから、四周。スポーツテストでよく一キロ走ったけど、私にとってはもはやマラソンですよ(笑)それを速く走り続けるなんて……最も短い短距離、おそろしや。
 なぜ八〇〇メートルを始めたのかって訊かれたなら、雨上がりの日の芝生の匂いのせいだ、って答えるぜ。思い込んだら一直線、がむしゃらに突進する中沢と、何事も緻密に計算して理性的な行動をする広瀬。まったく対照的なふたりのTWO LAP RUNNERSが走って、競い合って、そして恋をする――。青空とトラック、汗と風、セックスと恋、すべての要素がひとつにまじりあった、型破りにエネルギッシュなノンストップ青春小説。(Amazon
 対照的な二人の男子高校生が交互に語っていく形をとっている。かなり頻繁に切り替わるので忙しい。全然違う二人だから、わかりやすいんだけどね。ただ一人称はもう少し省略できるんじゃないだろうか? なんて。
 全体的にはあまり好きじゃなかったかなあ。最近セックス描写が苦手なのかも、と思い始めたので(笑)てかこの子たち結構ませてるよね! 中沢なんか中学の頃からじゃないの。こんなことを思ってしまう自分は歳を取ったんだな……。セックスと恋をカットしたらこの小説じゃないけど、私は純粋に八〇〇を走る二人を見たかった。ただ、積極的な妹と、広瀬と相原さんの関係には食いついた(笑)いやー度肝抜かれたわ。激しい!
 終わり方は爽やかでいいんじゃないでしょうか。 

 

「やっぱり、男の方がいいの?」

 妹は舌を入れてきた。ぼくの欲望が刺激される。妹は、ぼくのペニスに触れようとする。ぼくは笑って妹を押しのける。
(中略)
「山口さんだって、うちの学校の派手な子なんだから、お兄ちゃんのことぐらいだますの簡単よ。ねえ、キスしたくなったら、いつだって私がしてあげる」


 広瀬くんすごいっすよ……!