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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

サイモン・シン『フェルマーの最終定理 ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』  ★★★★☆

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
サイモン シン, Simon Singh, 青木 薫
「その問題はとても簡単そうなのに、歴史上の偉大な数学者たちが誰も解けなかったというのです。それは十歳の私にも理解できる問題でした。そのとき私は、絶対にこれを手放すまいと思ったのです。私はこの問題を解かなければならない、と」

 サイモン・シン自体が天才的ストーリーテラーなんだろうね。私は数学を毛嫌いしてきたけれど、彼の著書『暗号解読』と本書を読んで死ぬほど後悔。数学の魅力がよくわかります。著者の数学に対する熱さが伝わってくるようだ。どこまでも厳密に、例外を絶対に許さない数学の証明。ロマン……! 文系よりも理系の方がロマンは多いんじゃないかなあと思っている。
 3以上の自然数nに対してXn+Yn=Znを満たすような自然数X、Y、Zはない。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」。17世紀にフェルマーが残した超難問を、数学者ワイルズが1995年に完全証明した。ピュタゴラスに始まる数論、解決のカギとなった「谷山=志村予想」など、数学をめぐる「歴史ドラマ」を、分かりやすく感動的に描いた傑作。(Amazon
 完結に言えば傑作。フェルマーの最終定理は凡人に理解できるような代物じゃないので、ものすごい長さの証明はもちろん載っていないけれど、数学の歴史を感じることはできる。何百年も解けなかった問題が、時を経て解けただなんて。ワイルズの執念はすごい。偉い。
 日本人として嬉しいのは日本人の研究者・谷山と志村の両氏が大きく取り上げられているところ。日本人も貢献したんだなって思うと嬉しいじゃないですか。彼は女性研究者にもしっかりスポットライトを当てている。人種や性別に関わらず素晴らしい結果を残した人に注目する、ってのはなかなかできることじゃないのでは。
 フェルマーの最終定理が証明されたってことは、どこかに解があるかもしれないというロマン(私の)を失くしてしまったことかしら、と一度は思ったんだけど、どこまで数を大きくしても決して解はない、というのもまたうっとりしてしまうロマンですね(笑)
 この世は数学と物理学とその辺でできているのかな。勉強したい。