Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

瀬尾まいこ『温室デイズ』  ★★★

温室デイズ
温室デイズ
瀬尾 まいこ
 みちるは多数の生徒に好かれている。本人もそれをわかっている。自分ならできる。そういう思いがあったのかもしれない。だけど、見落としている。今、この学校で力を持っているのは、数は少なくても悪いやつらだ。

「うっとうしいと思って適当に聞き流してた言葉でも、受け売りのいんちきな台詞でも、一生懸命かけてくれた言葉は、ちゃんと身体のどこかに入ってるんだね」

 教室に紙飛行機が飛びはじめる。始まりの合図だ。もうすぐ崩れだす。でも、教師はまだ気づかない。日本の平和ボケは、学校の場でも存分に発揮されている。生温い方法では、もう追いつかなくなってしまうのだ。「今なら、なんとかなるはずだよ」。私は祈るような気持ちで崩れていく学校を見ていた…。この温室のどこかに、出口はあるのだろうか―。ふたりの少女が起こした、小さな優しい奇跡。ひりひりと痛くて、じんじんと心に沁みる。『幸福な食卓』の気鋭が贈る、とびきりの青春小説。(Amazon