Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

辻村深月『冷たい校舎の時は止まる(下)』  ★★★☆

冷たい校舎の時は止まる  (下)
冷たい校舎の時は止まる (下)
辻村 深月

『お前は桐野景子なんだから』
 牧村に言われたその一言は鋭い棘となって、景子の胸に突き刺さったまま抜けなかった。気安く信頼を寄せた先にあった、それは裏切りだった。他人に甘え、自分の醜態を晒してしまったことは耐え難い程屈辱だった。


 面白かったけど上中下に分ける必要が全く感じられない(笑)一冊にするには無理があるとはいえ、上下で充分でしょうよ。一冊平均800円だし。二冊にすれば1000円くらいで買えるんじゃないの? 私は下巻だけ届くのが遅くてやきもきさせられたんでね!
 彼らは思い出せない。どうしても“その名”を思い出すことができない。学園祭最終日、学校の屋上から飛び降りて死んでしまった級友は誰だったのか。緊張と不安に包まれ次々と仲間が消える中、抵抗も空しく時計は進んでいく。そして不気味に鳴り響くチャイムとともにまた一人、誰かが消える。彼らを校舎に閉じ込め漆黒の恐怖に陥れている『ホスト』の正体がついに明らかに。(裏表紙)
 今回は裕二が格好よかった。そんなとこしか見てないのかと言われそうだけどこの手の男子は癒しだから。ときめきだから。現実に有り得ない人たちを見るのはすごく楽しいけど、見慣れてしまってそれが現実にも有り得ると求めてしまったら恐ろしいのだが。往々にして読書家の理想が高くなってしまうのは不可抗力ですよね(笑)
 ヒロとヒロの話、どっちがどっちか分からなくなって読みにくかったわ~。ここんとこ、もう少し工夫してほしかった。私の頭が悪かっただけかもしれないけど。
 私はミステリを読むのにはまったく向いていない。書かれたことを全て鵜呑みにしてしまうから。自殺した人の正体も、その他もろもろも、全然わかんなかったんだよね、悔しい~! この小説は練りに練って書かれたのでしょう。よくできてる!
 しかし気に食わない作者だな(笑)写真が出てるってのも嫌だ。若い女性が「写真を出せる」って、見て私ってかわいいでしょ~的意識が感じられるんだよ。もちろん、それだけで作者を判断したらいけない。でも、内容が内容だからね! 同姓同名の主人公は格好いい男をはべらせて友達にも恵まれたし(語弊有り笑)繊細で硝子のような私はモテ子☆ ってか? こんなうじうじした女に魅力など感じられなーい! 華奢で小柄な美少女なのかな?
 気を取り直して。これがデビュー作なのかあ。かのメフィスト賞! 『子供たちは~』の上巻も借りたのでまた読もうっと。

 

「深月、ここから帰ったら」
(中略)
「生きるのを、諦めるな」

「みーちゃん、いこう」


 オチを知ってから読むと違う! 菅原はずっとわかってて、「菅原」をやっていたんだね。まさか、菅原=サカキくんだとは思わなかったなあ。榊ってよくある苗字だし。再読すると、皆フルネームが出てくるのに菅原だけかたくなに菅原だってことがわかるから、目ざとい人は気づいちゃうのかも。ヒロ(鷹野)の小学生時代の彼女は深月だし、もう一人のヒロが死んだ時に一緒に泣いたのも深月。そうかあ。よくできているなあ。
 結局、自殺したのは春子だった。きっかけは深月。自殺後、深月は春子にもらった手紙をちぎって便所に流し、ちゃんと死んでいてほしいと願ってしまう。ここで深月は春子を殺したことになる、と。
 八人を閉じ込めたホストの深月は、春子に攻撃性を持ってしまったことが許せなくて、自分の人格を弱々しく作り出していた。だからあんなに苛々したのか☆ いえ、どっちにしろ苛々するんですけど。鷹野は幼少の事件によって深月が刷り込まれちゃったんじゃないの? 異様なものを感じます。二人の関係は普通じゃないよ。引きこもり探偵シリーズに似てるかも。

「言われなくても知ってる。あの女には俺しかいない」


 ちょっとちょっと、かっこよすぎじゃありませんか裕二(笑)景子も好ましかったので二人がくっついたことには素直に拍手!
 景子の悩み、自分は他人にとってどうあるべきなのかって、同感している人が多いことでしょう。私も他人に弱みを見せるのは我慢ならない。高校生並みの精神状態、ってことかしら(笑)