Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』  ★★☆

夏期限定トロピカルパフェ事件
夏期限定トロピカルパフェ事件
米澤 穂信
「わたしの、この夏の運命を左右する……」
「運命……」
「<小山内スイーツセレクション・夏>」
 ぼくはゆっくりと玄関のドアを閉めた。

「残るのは、傲慢なだけの高校生が二人なんだわ……」

 ここだけ見てみると、米澤さんはリーダーを多用する人みたいですね。実際そうかな。
 小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を! そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!? 待望のシリーズ第二弾。(Amazon
 前回はつまらない、と思ったけど今回は結構面白く読めた。相変わらずどうでもいい謎も含まれてるんだけどね(「日常の謎」があまり好きではないので)短篇集のような中身でありながら、全てが繋がってゆくさまはきれいです。そこらへん解説で詳しく書かれていて、自分で書く気はしません(笑)私はそこまで本格っぽさを感じられないんだけど、それは登場人物にカムフラージュされちゃってるからかな。
 「狼」である小山内さんと「狐」の小鳩くん。春期~は高校入学直後、夏期~は二年の夏になってます。傍から見たら地味なカップルの二人は、一年ちょっとうまくやってたんだね。人気があったみたいでシリーズ化され、秋期はモンブランとの噂が。秋期限定モンブラン事件? ちょっと語呂が悪いな。12月・4月とテンポよく出ているので、次は8月に秋を先取りか。
 私が今回面白いと思ったのは、やっぱりラストの自己分析あたり。んでもってあの終わり方。次はどうやってはじめるの!? と今から心配しちゃいますよ……あ、これが米澤マジックか!笑 別に好きな作家って程じゃないのにいつのまにか……。古典部シリーズに通じるほろ苦さ、私好きなんだろうなあ。