福井晴敏『Op.ローズダスト(下)』 ★★★★☆
助けようと思えば助けられない道理はないのに、無名の他者を人間と捕らえられない想像力の欠如、なにごとも合理で量る感性の磨耗が人を殺す。そうして他者への共感を欠いたところで形成される国家は形骸に等しく、その国益が“全体の利益”になろうはずもない。にもかかわらず、国家という組織事態の生存衝動に搦め取られ、時々の利害調整の産物を国益と呼ぶ思考停止が人を殺す。
燃える……!(断じて「萌える」ではない)
下巻のあらすじを書くのはネタバレになるのかもしれないからやめます。てか何を言ってもネタバレか? とにかくおもしろかった。どきどきはらはら。男達が漢気に溢れていて、頑張ってー負けるなー死ぬなーと強く念じることしかできませんでした。
下巻でやられたのが、SOFの古森さん。彼は最も色気のある発言をもたらしてくれました……! いや、そこに色気を感じる私がおかしいのですよ。それ抜きにしても素敵でしたが。
組織にくみこまれているゆえに避けられない圧力、衝突、確執、軋轢、理不尽、そういったものが絡んだ時の苦悩や怒りがすばらしいと思います(あれ?)
最後に、私は日本に武装してほしくないし憲法九条を改正してほしくもない。それは感情に基づいた願望かもしれないけど、三佳のいう“新しい言葉”が生まれ、根付き、平和に生きていければいいなと思います。
ちょっと前には「おれたちって何だよ」と言っていた朋希が、ヘリに乗っているとき羽住に「おれの、おれたちの」って言い直すところが大好きです。てか羽住さんが格好よすぎてどうすればいいかわかりません。