Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

有栖川有栖他『血文字パズル―ミステリ・アンソロジー〈5〉』  ★★★

血文字パズル―ミステリ・アンソロジー〈5〉
血文字パズル―ミステリ・アンソロジー〈5〉
有栖川 有栖, 麻耶 雄嵩, 太田 忠司, 若竹 七海
「どうだった。意外と様になっていただろ」
 自信を持って後ろを振り返る。すると今までずっと顔を伏せ待機していたワトソン役がつつと近寄ってきた。
「君ねぇ。君こそスミス企画に所属すればいいんじゃないか? 面白いコンとを見せてもらったよ、美袋君」(氷山の一角)

「やっぱ、キスだけでも、するか」(みたびのサマータイム

 友だちに「お前これ読め! 麻耶!」と貸された。読んだ。吹いた(笑)麻耶さん遊び心ありすぎです。びっくりした。他の短編もなかなかよかった。シリーズものっぽいから嫌だな、と思ってたんだけど普通に読めました。もう廃刊になってしまった角川スニーカー文庫
 砕けた叫び(有栖川有栖):探偵事務所を経営した木内聖治が殺された。現場には、叫ぶ人をかたどった人形が床にちらばっていた。これは果たしてダイイングメッセージなのか。
 八神翁の遺産(太田忠志):風吹市を発展させた八神翁の孫、仁志が撲殺された。彼は自らの血で「川冂」と書き残していた。行き詰った警察は、デュパン鮎子とその孫・奈緒に事件を依頼する。
 氷山の一角(麻耶雄嵩):ひょんなことから探偵役とワトソン役を交換することになった、メルと美袋。スミス企画でマネージャーをしている男が殺された現場に赴くと、四つの十字のダイイングメッセージが。他の要因からも“フォー・クルセイダース”が怪しいということになり……。
 みたびのサマータイム(杉原渚):十七歳になった夏の日、渚はともに過ごす相手もいず、崖の上の化け物屋敷に行ってみた。ふらふらしていたら、自殺志願者と勘違いされ……。
 有栖川はいつも通り。アリスがおばかっぽくてかわいいなー。ノーパソ持参か! 講演会で麻耶先生が仰ってたけど、ワトソン役はちょっとおばかにしないと成り立たないんですってね。この世のワトソン役は皆ああ抜けてるのかしら……。
 太田忠志は初読み。たくさん著作があると思うんだけど、どれから手をつけるべきか分からず放置(そんな作家が大量にいる)。蜷沢のように、土地の名士をあんなにも尊敬できるのものだろうか? ラストが怖。
 麻耶先生にはもうやられました。美袋君はアリスより数段おばかでかわいいです。それは鬼畜メルあってのものだと思うけど……。彼はいつでも全てをお見通しさ☆ 毎回ひどい目にあってもなお、ワトソン役を務める美袋君。哀れ。でもメルも哀れ(『翼ある闇』参照)
 若竹七海はいつものブラック風味。久しぶりに読んだなあ。やっぱ好きだなあ。若竹さんの描く女性はすごく好感が持てます。いいとこで終わっていて気になる! 事件そのものは割とどうでもいい(ごめんなさい)!
 ミステリアンソロジーなのに登場人物にばっかり言及してしまった。血文字パズルという題名の通り、ダイイングメッセージを扱ったものです。謎解き自体は普通かな、って感じだけど、薄くて読みやすいし、特に麻耶ファンは必読かと。