Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

殊能将之『子どもの王様』  ★★

子どもの王様
子どもの王様
殊能 将之

「大人になりたいな。」
「なにいってんのよ。大人になったら、大人になるのはあたりまえじゃない。」


 ミステリーランド第一回配本。出版されたのは2003年だった。そんな昔の話なの! 私がミステリーランドで読んだのは『くらのかみ』『神様ゲーム』『闇の中の赤い馬』と、なかなかヘビーなラインナップです。
 ショウタの親友トモヤは学校にはほとんど行かず本ばかり読んでいる。そのせいか途方もないつくり話をよくする。この団地の外側には何もない、現に団地の案内図には外側なんて描いてないじゃないかという。今日も学校はあったよとショウタがいうと、昨晩大急ぎで造ったのさ、といった調子だ。他にも団地に住む西の良い魔女と東の悪い魔女の話とか、残虐非道な子どもの王様の話とか……。だがある日、ショウタはトモヤがいうとおりの姿かたちをした男を目撃する。もしかしてあれが子どもを穴蔵に閉じ込め、召し使いとしてこきつかうという子どもの王様?(Amazon
 読み終えて第一に思ったのは、ぬるいね、ってこと。子どもに読ませたくない路線の中で一番弱い。てか『神様ゲーム』を読んでからだと何読んでもぬるいんだよなあ。やるんならもっと非道に!笑
 一つよくわからない点があった。ネタバレなので後にする。それは殊能さんが子どもの視点を貫き通したからなのかな。
 私がすごく好きだったのはマジックの描写だったんだけど……今探したら見つからない。小学校中学校の頃はよく学校所有のマジックを使ってポスターとか作ったなあって。インクが乾かないうちに他の色を使って芯が汚くなったりして。それを使うと濁った線が……みたいな。マジックと学校って切り離せないな。すっかり忘れてたけど。
 サオリとショウタの家庭はほんわかしていていいね。お父さんがいないって、経済的にも精神的にも大打撃だろうが。
 作中に出てきた弾コン(笑)とパルジファルの作りこみはよくできていた。麻耶さんもジェノサイドロボとか出してたけど、やっぱり子ども=戦隊ものなのかしら。はまる年齢がおかしくないか? と思うのだが。低学年から中学年までじゃないかな。女の子のセーラームーン(今はプリキュア?)と一緒で。ネットで「戦隊ものがあの時期に終わるのはおかしい」という意見を目にして、そんなところに注目する人もいるのか! と感動さえ覚えた。殊能さん、あと一息だったね。

 

 子どもの王様を見てショウタが驚いたのは、顔が似ていてトモヤのお父さんだって気づいたから? よくわからないんだよなー。最後に明かされるわけでもなし。ショウタの知り合いかと思っちゃった。容赦なく子どもの王様を殺すショウタ。すさまじい。
 地図と団地の壁に落書きしてミスリーディング(と言っていいものか)したのは褒めたい! 頭いいな~。まあ、ショウタのせいで二人も死んでしまったんだけど、ね……。