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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

米村圭伍『風流冷飯伝』  ★★★

風流冷飯伝
風流冷飯伝
米村 圭伍

「将棋は最初にすべての駒を盤に並べます。盤面にある駒を動かすのを指すと申します。囲碁は始めは盤に石が置いてございません。交互に黒石と白石を置きますが、これを打ちおろすという意味で打つと称します」


 へえ! ヒカルの碁を読み返してたけど、知らなかったわ(笑)将棋も指せず、囲碁も打てずの私ですが。
 四国は讃岐の吹けば飛ぶよな風見藩が、この法螺噺の舞台です。ご案内役は、お江戸で鳴らした幇間(たいこもち)・一八。相方を務めますは、お武家の次男・数馬、俗に申します冷飯ぐい。でも、この男、暇のつぶし方が、なんだか飄々としております。藩のしきたりも、すこぶる妙です。そんな冷飯ぐいどもが、何の因果か、藩の命運を背負うことになったから、さあ大変――。(裏表紙)
 よくネット上で感想を見かけるのでシリーズを順番に読んでみよう、と借りてきた。表紙は『しゃばけ』の人と同じだ。地の文がですます調で語り口調の本なんて久しぶりに読んだ。児童文学はそういうの多いけど、大人向けになるとめっきり姿をあらわさない。
 本書は時代小説ながら堅苦しさは欠片もなく、ラノベ感覚(褒めている)ですらすら読める。江戸時代は性生活が今よりオープンだったのもあり(?)、よく性描写が出てくるんだけどこれが下品ではない。格闘技みたいで面白い。やってることはセックスなのに、あっけらかんとしている。そういえば春画ってモロ描いちゃってるよね。
 江戸から来た一八が風見藩の人たちを平和ボケしすぎだ、と評しているように終始ほのぼのと物語は進む。数馬と藩内をうろうろして何人かの冷飯に出会いながら、いつのまにか藩の存続に関わることになり、というか一八もただの幇間ではなくて……。それでもやっぱり平和だ。
 めでたしめでたし、と締めくくりたくなる本でした。様々なことに遊びを見つけて楽しく過ごしている風見藩の人たちを見習わないとね。
 ちなみに辞書で幇間は:宴席に出て客の遊びに興を添えることを職業とする男性、だそうで。知らなかった。そんな愉快な職業があったのか。

 

 拓磨がチャンピオンになってよかったな! 風見藩は田沼によって潰されずに済みました。一八に衆道の気があったらお相手頼みたい、とか言わしめる凛とした格好よさをこの目で拝みたいです。