Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』  ★☆

春期限定いちごタルト事件
春期限定いちごタルト事件
米澤 穂信
「弱気になるのはわかるけど、小山内さん。ぼくたちは別に、自分を誤魔化してるんじゃない。自分の短所を直そうっていうんだ、多少は無理もあるさ。悪いってわかってて野放図にやるのは自制心がなさすぎるって、いつだったかそう教えてくれたのは小山内さんじゃないか。矯正中なんだよ」

 どこがだめってわけでもないけど、面白みに欠けるんだよなあ。偉そうなこと言ってすみませんと謝っておきます。読む前はブルジョワの二人が庶民になじむ話だと思ってました。
 小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?(Amazon
 羊の着ぐるみ、For your eyes only、おいしいココアの作り方、はらふくるるわざ、孤狼の心が入っている。連作短編集。
 ミステリの、日常の謎ってジャンルは「それがどうしたの、どうでもいいじゃん」って切り捨てられるところがあると思う。殺人や誘拐や脅迫とかの物々しい事件があれば解決しなくちゃってなるけれど、日常に潜むちょっとした謎なんてものは目をつむって通り過ぎることができる程度でしょ。当人にとっては大事件なんだろう、解説にあるように。でも、部外者である読者が当人に感情移入ができなければ、大事件にはならない。大雑把で図太い私なんかは特にそう。登場人物が気に食わないなあ、なんて思い始めたらもう終わり(北村薫の円紫さんモノは、語り手の女性が好きではないためそうなった)。どこまで好奇心旺盛なんだこいつ! って冷めてしまう。
 まあ、米澤穂信古典部シリーズとか読んでるから、そういうものだって分かってたけどさ。二人の過去には興味が湧くので、新刊の『夏期限定トロピカルパフェ事件』は暇があれば読みます。薄いしね。