Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

重松清『きみの友だち』  ★★★★

きみの友だち
きみの友だち
重松 清
「あと、世界の最後の生き残りになることも、ありえない」
「……うん」
「誰かいるよ、絶対に。嫌かもしれないけど、いるよ、ずうっと」(ふらふら)

「わたしは、一緒にいなくても寂しくない相手のこと、友達って思うけど」(にゃんこの目)

 売れているから悔しくて、別に好きな作家でもないんだけど(笑)でもやっぱうまい。ずるいくらいに泣かせ上手だ。くそー。恵美を中心とした連作短篇集。「きみ」という二人称で綴られている。珍しい。
 あいあい傘:交通事故で左足に障害をおってしまった恵美。色々あって、退院する頃には友達がいなくなっていた。なわとび大会で、恵美はのろまな由香ちゃんと二人で回し手をすることに。
 ねじれの位置:何でも得意で五年三組のヒーローだったブンちゃん。そこに、自分よりデキる奴・モトくんが転校してきた。「負け」を否が応にも味わう羽目になり……。
 ふらふら:みんなを笑わせるのが大好きで、いつも人に囲まれている堀田ちゃん。人間関係において「平和」主義なことがきっかけになり、ある日突然宣戦布告をされてしまった。
 ぐりこ:ブンちゃんと幼馴染の三好くん。モトくんが来てから、ブンちゃんに見捨てられた気がしている。サッカーで表象された二人は先輩に目をつけられてしまったのだが、三好くんが軽い気持ちで言ったことがひきがねとなり……。
 にゃんこの目:ハナちゃんは急に視力が悪くなり、眼科に通っている。親友の志保ちゃんはこの頃彼氏優先で、約束をやぶられっぱなし。
 別れの曲:佐藤くんはサッカー部のOB。同級生の女の子に片思いしている。その子がバレンタインに本命チョコを作るという噂に、ほのかな期待を抱く。
 千羽鶴:転校してきたばかりの西村さん。入院した由香ちゃんのために、千羽鶴を贈ることを提案する。前の学校でうけたいじめのせいで、いまひとつ皆になじめず……。
 かげふみ:モトが告白した相手は、ブンと付き合っていた。それだけでもショックなのに、サッカーの選抜チームに入ったのも、ブンだった。わだかまりを抱きつつ、練習にも身が入らない。
 花いちもんめ:由香ちゃんは昏睡状態が続いている。受験を前にして恵美は、由香ちゃんとお別れする覚悟なんて甘かったんだなあと思う。もっと――。
 きみの友だち:恵美の写真展にて。僕は、フリーライターだ。NPOが運営するフリースクールで恵美と出会った。
 友だちって何だろう。そう考えされられる本。私のことを友だちだと思ってくれてる人はどのくらいいるんだろうか?
 今振り返ると、小学校から中学校までが一番友達関係に悩まされたんだなあ。クラスにはグループがあって、イケてるとかイケてないとかっていうはっきりとした優劣があって。男女ともそう。グループの中にもリーダーがいて、順番に誰かをはぶいたりして。バカだなあ。重松さんはそこらをリアルに描いている。堀田ちゃんの相関図、ブンとモトの呼び名。ひー怖い。大学生になった今より密な毎日を過ごしていたとは思うけれど、果たして実のあるものだったのか。でも、そういうのをくぐりぬけて学ぶものもあるよね。
 堀田ちゃんと恵美のやりとりは重いなあ。一人きりになることなんて絶対ないから、いつも誰かを意識していなければならない。集団の中で生活していかなければならない。それは少なからず自分を装う必要があるってこと。