Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

星野智幸『虹とクロエの物語』  ★★☆

虹とクロエの物語
虹とクロエの物語
 私の罪悪感はいつだってそこに根ざしている。自分を裏切ったくせに、子どもを作ってしまった。傲慢なだけで内容のない自分が、子どもの目の前でサンプルとして生き続けなくてはならない。私は子どもに自分を学び取ってほしくないのに、子どもを教育しなければいけない。

 私はごくごく平凡な学生時代を送り、その平凡さに浸かって生きてきたから彼女らのような現体制への反抗? みたいなものは持っていなかった。思春期も大したことなく過ぎたし、今も茫洋とした日々を送っている。『バッテリー』の巧のように、上からの圧力に反してまで固持すべきものはもっていなかったし、でもそれを哀しいことだと思う。
 著者はうちの大学で創作指導をしているので、WEB本の雑誌で高く評価されているのを見て、読んでみようと思った。シラバスで言っている通り、彼は文学を書いているのだなあ。