山本幸久『幸福ロケット』 ★★★★
幸福ロケット
山本 幸久
「そうよ、ユウキ。女は努力してきれいになるの。お母さん、すっごく努力したんだから」
「男は」とコーモリは自分の二十歳の顔を横目で見つつ、いった。「どうすればかっこよくなれるの」
「苦労よ」
文句なしに優しい気持ちになれる本。終盤に差し掛かると涙がほろり。小学生の頃ってこんなにキラキラしてたんだろうか……? 老けた喋り方が少し鼻につくが。
ふたり、同じ未来を見てた。京成電車に、ガタゴト揺られながら……。クラスで八番目にカワイイ「あたし」(山田香な子、小五♀)と深夜ラジオ好きでマユゲの太いコーモリ(小森裕樹、小五♂)の可笑しくて切ない初恋未満の物語。(Amazon)
もくじは、三つの不幸、五年二組、お嬢様軍団、夜のひよこ、三つの看板、結果オーライ、お父さんのオムライス、お笑い三人組、未来の似顔絵、テン・ミニッツ、天文部結成、星空散歩、十一歳のクリスマス・イブ。ぐだぐだあらすじ書くよりよっぽどいいね、もくじって。三って数字がキーワード?
切なくかわいい恋愛が魅力の本書ですが、読書女にとってはそれ以上の意味があるんじゃないかと。ねえ? コーモリはよくわかってるよ!笑 あんなこと言われた日には、本読みはいちころ(古)ですよ。言われてー。
そして勉強していい大学に行ってどうするの? って問いにああいう答えを返せる香な子は立派だ。すげー。
『山田太郎十番勝負』が気になったのでメモ。
「本を読むのも楽しいけど、本について山田と話すのも楽しいもんな」そしてこうつけ加えた。「だからおれは本を読むんだとおもう」
「わかんないよ。いまはわかんない。でもずっと勉強していうくうちにわかってくるとおもうんだ」
「あたしの未来にはコーモリがいてほしい。コーモリがいない人生なんてあたし、考えられない。さびしいよ、さびしくてたまんないよ。さびしいのはいやだ。だからさ、お願い」
いつの間にかコーモリは香な子を見ていた。そしていった。
「おれがそばにいないと、きみよりさびしいおもいをするひとがいる」
名言集でした。