Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

三崎亜記『となり町戦争』  ★★

となり町戦争
となり町戦争
三崎 亜記
「どうぞ、戦争の音を、光を、気配を、感じ取ってください」

「命の尊さ」というものが、戦争という条件をかぶせられることによって、いとも簡単に切り替えられるという仕組みがうまくわからなかった。「人の死」はいつ、いかなる時であっても「人の死」であり、「殺人」はどんなに言い換えようとも「殺人」でしかないのではないか?

 第17回小説すばる新人賞受賞作。デビュー作でありながら、133回直木賞(花まんまが受賞)の候補作にもなったので有名でしょう。好きな本読みさんが『バスジャック』を褒めていたので、それなら最初から、と予約してみた。春樹チルドレンには好きな人が多いしね。
 ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。だが音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないまま。それでも戦争は着実に進んでいた―。シュールかつ繊細に、「私たち」が本当に戦争を否定できるかを問う衝撃作。第17回小説すばる新人賞受賞作。(Amazon
 戦争としての実感はないけど、確かにそこで起こっている。戦死者も出ている。でも、やっぱり、戦争が起こっているとは思い難い日常。戦争が自治体の政策として使われ、善悪の区別がはっきりしていない。