Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

有川浩『空の中』  ★★★★★

空の中
空の中
有川 浩

「いや、この辺でそろそろ元気ほしいなって。義務感とか使命感とか、そろそろ限界かなって。俺、国防の人じゃないから」
 日本の運命などを賭けられても、対象が大きすぎて実感が湧かない。
「誰かのために頑張る図式なんか欲しいなあ、と思ってさ」

「お前は一体何様になったがな」


 お、も、し、ろ……(ぱたり)
 『海の底』『塩の街』と順不同に読んできた私ですが、本書が一番面白かったのではないかと。読み方としては間違ってなかったのではないかと。塩を最初に読んでたら次への食指が動かなかっただろうし、本書を最初に読んでたらこれほどの満足感を得ることができなかっただろう。うん、すっごい満足!
 日本のビジネスジェット機、自衛隊のF15Jと、同じ場所での航空機事故が相次ぐが、原因が分からない。原因究明のため、ビジネスジェット機「スワローテイル」の製造元から、春名高巳が事故調査委員として自衛隊岐阜基地へ派遣された。自衛隊機事故の当事者である武田光稀に事情を聞きに行くのだ。一方、その事故で父を失くした少年・瞬は、海で不思議な生物を見つける。幼馴染の佳江とともにそれを持ち帰るのだが……。
 読書の楽しみって色々あるけれど、有川浩の本は単純に読み進める楽しさを教えてくれる。ストーリーが、文句なしに面白い。わくわくする。後書きにあったように「怪獣物と青春物足しっぱなしで空自で和え」た本だけど、この三つのどの要素をとっても面白いのに、全部混ぜたらどんなことになるんだって話よね。下手にやれば破綻するだろうに、うまくまとまっていると思います。本を読んだことで何かを得る・残る、そんな読書もあるし本書だって色んなことを教えてくれてるんだが、読むこと自体が楽しいってのは幸せに直結するね。
 『海の底』も相当面白かったんだけど、なぜこちらの方が評価が高いかというと、光稀と佳江の女性陣がよかったからです! 塩の真奈、海の望は正直気に食わなかったからです!
 光稀はいわゆるツンデレにあたるんでしょうな。別にツンデレ好きなわけじゃないが。んでもって『アリソン』シリーズと似たところがあるんですよ。光稀が可愛かったってことです。高巳とくっつくことを、素直に望めるくらいに(高巳は私のタイプだったにも関わらず)(一方海でのラストは私は納得できません~!笑)。佳江と瞬はもう入り込む隙がないし、瞬にはあまり魅力を感じなかったので措いておく(全て主観)。佳江が方言なのはよかったね! あの性格で標準語だと、姉御っぽいお嬢様になってしまう恐れが。
 年を重ねることによって身につけるものは、確実にあるんだなあと思います。宮じいの言葉は素朴ながら力がある。
 有川さんは前作で掲示板、本作でも高巳と白鯨の会話記録など、書式(?)の違うものを挿入して読者を飽きさせない。こういうとこが漫画好きには結構堪らないんじゃないでしょうか。
 身も蓋もないこと言えば、ヒーローの近くに魅力的な脇役を置くなってこと(笑)ヒロインとくっつくだけにしといてくれよ! 冬原と入江をヒロインとの間に割って入れようとしてしまう腐った思考回路のなせる業……。

 

「お母さんが間違うちゅうがやき。間違うちゅうほうが、間違うてないほうを許したりはできんろうがね」


 おおお宮じい! 年の功ってすごいね!