Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

有川浩『塩の街』  ★★

塩の街―wish on my precious
塩の街―wish on my precious
有川 浩
「世界のために好きな人を諦めろなんて、誰が言えるって言うのよ。そりゃ、助かりたくないって言ったらウソになるけど。あたしが自分で救うわけじゃないんだし」

 ―――あたしたちは、恋だろうか。

 先日読んだ『海の底』のものすごいリーダビリティにやられ、デビュー作である本書と『空の中』を借りてきた。来月に『図書館戦争』なる新刊が出るそうで! これは読みだなー。題材が図書館ってのは無条件にときめくね。といっても、『図書館の神様』くらいしか思いつかないけど。
 塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。東京で暮らす男・秋庭と少女・真奈。静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた。そして――「世界とか、救ってみたいと思わない?」そそのかすように囁く男・入江が、二人に運命を連れてくる。(カバー折り返し)
 いやー……これほど挿絵が内容とそぐわない本はないな! 表紙見たときはまさかこんな話だと思わなかったですよ。真奈はいい、私はこのビジュアルを受け入れてしまったからこの絵以外に想像出来なくなっちゃったんだけど、秋庭は違うだろう。勝手なイメージはちょっと後ろで結べるくらいの髪型です。無精ひげありそうな。こんな美しい人じゃないっしょ! 入江もねえ……溜息。
 キャスティングが『海の底』と似通っていたのが残念。あれか、福井晴敏系か(自衛隊+似たようなキャラクター)(こんなこと言いながら福井さんファンです)? 秋庭=夏木、入江=冬原、真奈=望じゃないかしら。ねえ。『空の中』ではどうなるのか楽しみ。ちょっぴり読んだら初っ端からえぐいエピソードあったけど。
 本書は、人間(自衛隊)VS不思議という、トンデモSFファンタジー・自衛隊三部作の一作目。かなり恋愛要素が色濃い。後書きにもあったけれど、②の選択肢の話ですから。私は恋愛を応援してあげたいような好みの女性キャラクターには滅多に巡り会えないんですが、真奈もダメでした。その健気さとまっすぐさは買う! しかし、どうにも応援しきれないのは私が汚れているからでしょうか……。
 まあ、デビュー作らしい感じだったかな。作を追うごとにうまくなっている(と言うには資料が足りないが)ので、今後も期待大。