Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

恩田陸『禁じられた楽園』  ★★

禁じられた楽園
禁じられた楽園
恩田 陸

 才能とは過剰である、とは彼女の師匠の台詞である。
 型もスタイルも忘れ、ひたすら手を動かして造りまくれ。おまえらにはそんなもの二十年早い。頭で作っているうちは、個人のスタイル云々など言えたものではない。
(中略)
 数と量、そしてスピードを要求されると、いかに自分たちが語るべき言葉や語りたい物語を持っていないか、それまで自分が造ってきたものがいかにみすぼらしいちっぽけなものだったかを思い知らされるのだ。


大好物の青春群像ものかと思いきや、何だかすごい話だった。ホラーなのか何なのか、鳥肌を立たせるゾクゾクとしたものが背中を伝わってきます。
 恩田陸は読者を恐怖に陥れるのがとてもうまく、風呂敷の広げ方は超一流なのに、結末でのたたみ方はイマイチだったりする、特に本書。まあ広げる過程だけで十分読ませるし、読者に判断を委ねるのは嫌いじゃないんだが……うまくたたみあげることが出来たなら、大作になるのに。
 世界的天才美術家・烏山響一。彼の同級生である大学生・平口捷と、彫刻をやっている美大生・香月律子の二人は、響一に内輪のホーム・パーティへと招かれた。和歌山の山中につくられたプライベートなギャラリーの開設祝いということだが、そのギャラリーとは響一の伯父がこしらえた、巨大なインスタレーションだった――。一方、星野和繁は学生時代の友人・黒瀬淳と偶然再会し、飲みに行く。その後、彼の婚約者・夏海から、淳が失踪したとの知らせを受ける。
 二つの方向から浮かび上がる、烏山家のおどろおどろしい真実。しかし最後は駆け足で何が何だかわからずに終わった。あの人がいきなりヒーローさながら登場したのにもびっくりした。

 

 至上の愛って!!!