時雨沢恵一『キノの旅 Ⅸ』 ★★★☆
キノの旅〈9〉the Beautiful World
時雨沢 恵一
「自分を守るため、もしくは誰かを守るため、戦わなければならない時に一番重要なことは、常に頭に置いておくべきことは――“不意打ちをする”ことです。相手に準備も心構えもないうちに、もしくは向こうのパースエイダーが届かないところから、一方的に弾丸を撃ち込み殺してしまう。(中略)より卑怯な方法ほど、より確実な方法なのです」
いやーキノシリーズも9冊目ですよ! 早いなあ、2000年にはじまったのか……私はいつから追いかけていたんだろう。二冊目くらいかしら。以来ずっと時雨沢ファンを続けている。キノシリーズは久しぶりだなあ。このブログにはリリアからしかないものね。去年は読んでないんだ。
キノ&エルメス、シズ様(彼のことは様付けじゃなきゃ呼べません)&陸+フィー、キノの師匠&ハンサムで少し背の低い男の三組が出てくる。どのコンビ(+α)も好きです。フィーは微妙だけれども(笑)
今回の表紙はちょっと1巻に戻った感じしない? 大人っぽかったり子供っぽかったり、絵の変遷も面白い。1巻からもう一度全部読んでみたいなー。
短い話がたくさんあるので、それぞれに対してのコメントを。
なってないひとたち:エルメスや陸にふきだしがあるのを見て、こいつら喋るんだな~と今更。もう自然すぎて違和感が全くない。
城壁の話:よく理解できませんでした。同じ文章や会話を何度も繰り返してもくどくないのはいいね。
悲しみの中で・b:いつもエピローグでブラックなオチがつけられるから怖い。
記録の国:「忘れたいことを忘れられるのと、覚えていたいことを覚えていられるのは、とてもいいことだよ」逆だったりするけどね。
いい人達の夕べ:~しなければいい人なんだけど、ってのはやるかたないことよね(笑)それをするんだからいい人ではないんです。
作家の旅:いい商売してるなあ! 私はキノたちの世界においてこれをやることは、咎めるつもりはない。本読みとして面白いものが読めれば。
電波の国:人間は見たくないものを見ない。シズ様ドンマイ。
日記の国:難しいなあ。仲良く同じ思い出を持つのも大事だけど、自分だけの思い出だって大事。「人間が、昔にあったことをどう思うかなんて、その人間によって、ぜ、全然変わるんじゃって思います!」
自然保護の国:なくなったものを大切にするだけじゃなく、新たに生まれるものに目を向けなくてはね。
商人の国:エルメスの冷静な分析力に乾杯(笑)
殺す国:戦争の理由がアレ、ってのも結構だけど軍人の生き甲斐がそれ、ってのも……。来る! って構えてたけど。やっぱりかー。ブラックだー。
続・戦車の話:戦車の話をよく覚えていない……いつだっけ? 子供たちは“すどーん”なのかと思いきや、よかったわ。
むかしの話:シズ様! ものわかりよすぎ! このおばあちゃんは何者なんだろう。モトラドに乗ってきた旅人って……。
説得力Ⅱ:上の引用した文章は師匠のお言葉。旅行好きなので心に留めておきます! そこまで物騒じゃないことを祈りつつ!
悲しみの中で・a:自分には悲しいことばかり起こるとか、なんて自分はかわいそうなんだろうとか、そんなんばっかりじゃどうしようもないってことね!
今回のあとがきは普通だと思わせつつ、図書館ユーザーには見えないところに……ああ、書店へ走らねば。そんな本が幾つかあった気がする……。