Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

冲方丁『マルドゥック・スクランブル The First Compression 圧縮』  ★★☆

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮
マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮
冲方
(私は生きていていいの――?)
 誰もイエスと言ってはくれない気がする。それが、無条件に愛された経験がない人間が抱える欠落だった。その欠落に従うか、それとも――イエスという答えを探すために生きるのか。なぜ自分なのか――その答えを探すために。

 ずーっと、事実相当前から、気になってました。この表紙、見覚えありませんか? 結構有名だよね? 思ってたより年齢高そうな絵だったけど、私はもっとロリかと。ラノベ、ではない……? ハヤカワ文庫です。うちの近所の図書館には置いてなかったのでおとりよせ。
 娼婦ロボットの話だとばっかり思ってたので肩透かし食らいました(勝手に)。娼婦あるいは娼年+ロボットって胸ときめく設定だと思いません? A.I.系のさあ。愛が何かはよくわからないけど愛されたいみたいなさあ。本書は違うのでご注意。復讐ものです。アクションが多かった。
 なぜ、私なの? ――賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットの叫びは爆炎のなかに消えた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にしてネズミ型万能兵器のウフコックだった。高度な電子干渉能力を得て蘇生したバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵方の担当官ボイルドが立ち塞がる。それは、かつてウフコックを濫用し、殺戮のかぎりを尽くした男だった……。(文庫裏表紙)
 バロットはなぜ私なの? という問の答えを出すために、ウフコックとドクターは自分の「有用性」を証明するために。有用性、かあ。普段は使わない言葉だわ。つまり使えるか使えないかってことだよねえ。厳しいな!
 なかなか独特な書き方をしている。英語のルビをふってみたり。舞台は少なくとも日本じゃないんだろうね。ラスベガスとか、そんな感じ。比喩がむりやり挿入されているような場面が全編通して多々あった。もう少しさりげなくできればいいですね(偉そうだな)。
 これデビュー作じゃないんですね。少女売春や性的虐待が絡んでいることもあり、やや過激な描写が出てきてしまうため、そして千八百枚に及ぶ長編であることなどから、出版には数年かかったという。三巻の後書き読んで感動しちゃったよ。