Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

P.G.ウッドハウス『比類なきジーヴス』  ★★☆

比類なきジーヴス
比類なきジーヴス
P.G. ウッドハウス, Pelham Grenville Wodehouse, 森村 たまき
「君は本当にあれが嫌いか?」
「激しく嫌悪いたしております、ご主人様」
「時間がたてば君の考えも変わるとは思わないか?」
「いいえ、ご主人様」
「よしわかった。結構。これ以上はなしだ。燃やしてくれ」
「有難うございます、ご主人様。今朝方朝食前にもう焼却いたしました。おとなしい灰色の方がずっとお似合いでございます」

 頼りない主人・バーティと、頼りがいのある執事・ジーヴスのまわりで起きる騒動を描いた短編集? 長編? どんな時もジーヴスはちゃっかりとしているのがおかしい。ミステリではないな。全てを見通すジーヴスのドッキリエンターテインメントだ。バーティの趣味の悪い洋服を処分しようと常に狙っているところもおかしい。
 翻訳するとどうしてもああ畏まった文章になっちゃうのかな。ジーヴスの台詞は特に、回りくどいっていうか丁寧すぎるっていうか。もう少し敬語を簡略化できないものかしら。とはいえ、私が一番笑ってしまったところは英語をそのまま翻訳しました! みたいな文章だったので(「お前の顔はさかなに似ている!」)、一概には言えないか。あの台詞が砕けた口調だったら(「お前さかなにそっくりだ」とかさ)、そこまで可笑しくなかったもん。
 本書はユーモア小説みたいなもんだけど、生粋の日本人としては英国のライフスタイルに馴染みがないので、笑いを損してるなーと思いました。それにしても、貴族って本当に優雅ね。あんな生活してみたいわ。湯水の如く金をばらまいでも、バーティは平気なんだもの。